家を建てる際に確率が高くなる二世帯住宅という選択肢、少し先の時代と生活の変化を間取りと家造りに盛り込む事、同居の深い意味のある部分を認識する事が大切です。

やまぐち建築設計室

著者:やまぐち建築設計室(建築家・設計事務所/奈良県)
2023-12-03更新
家を建てる際に確率が高くなる二世帯住宅という選択肢、少し先の時代と生活の変化を間取りと家造りに盛り込む事、同居の深い意味のある部分を認識する事が大切です。
関西での土地相場

何より実家が

奈良県という方も多いようです。






二世帯住宅を考えて

同居するという選択。



二世帯住宅は

単世帯住宅より

変化のスピードがはやいです。



2世帯住宅を考え始めた時

親世帯が60代

子世帯が30代

そして子供や孫が小学生だとして。



子世帯は子育てに忙しく

親世帯もまだ元気な頃。



20年後には子世帯も自分の定年や

老後などが気になってくる年齢に。



一方で親世帯は80歳代となり、

身体的な変化が

目立つようになってきます。



また孫(子供)は就職や進学で

家を離れている

という可能性も高いといえます。

世代の異なる家族が暮らす

二世帯住宅では

複合的な変化を前提に

将来を考えておくことが大切。



家族の生活をイメージした

間取りや設備を予め

想定しておく事。

二世帯住宅づくりを考え始め

まだ元気な時点で、

将来、体力や足腰の筋力が

衰えて移動するのが

難しくなる自身の姿について、

考えたくないという

親世帯のお気持ちはわかります。



親世帯から切り出さなければ、

子世帯としても提案しづらい雰囲気が

あるかもしれません。



親子同居世帯の7割以上が

介護を経験しているとの

データもありますから、

家づくりに介護のことを予め

織り込んでおくことが、

結局は将来にわたり

快適に暮らしていける事に

つながります。



織り込んでおくとは、

具体的にどのようなことをすれば

良いのか?。

親世帯の居室を起点に、

生活動線を複数考えておく。



必要となってくるのは、

トイレや浴室・洗面への移動。



次に必要になってくるのが、

リビングルームなどへの移動。



最後に考慮として、

庭への動線や外出時の

玄関から屋外への動線。



これら人の移動に関するルート、

動線については優先順位をつけて、

各部屋からの距離を

出来るだけ短くしておく事が

好ましいです。



次に移動手段。

足腰が弱ってきて伝い歩きが

必要になってくると、

手すりの取り付けなどが

必要になってきます。



さらに弱ってくると、

車椅子による移動も。



将来、手摺を取り付けることが

考えられる箇所には、

あらかじめ強度のある

準備として下地を備えておき、

予定工事を施しておく事が必要です。



車椅子の動線となる通路には、

段差を設けないことは勿論、

車椅子で通れる事は

想定されていても、

曲がる事が出来る幅を

考える人は少ないですから

それらの計画性も

必要になってきます。



ただし、

すべての通路の幅を

広くとってしまうことは、

必然的に居室部分を

狭くすることになりますから、

いかに効率的な動線設定をするかが、

間取りの良し悪しになってきます。



室内の移動に比べると

利用頻度は少ないかもしれませんが、

同様に考えておくべきことが、

庭や屋外への動線です。



近年は基礎を高くすることにより

床下の通気を良くすることで

腐朽やシロアリの被害を

予防することがあります。



また、増えつつある

大雨の内水氾濫による

建物の浸水も、

基礎を高くすることで

回避できる可能性が

高くなります。



その一方で、

道路から玄関への

アプローチ、

リビングから庭へのアクセスには

相応の高低差が生じるため、

必然的に階段を

設けることになります。



足腰の機能に

問題が無い時には、

何の支障も無い階段も、

一旦歩行器や

車椅子の暮らしになると

大きな障害となります。



外出が減る状態になって、

さらに外に出辛い

環境となってしまう

訳ですから。



これを回避するためには、

「スロープ」を設けることが最善。



新築時から階段と併設しておくのも

良いですし、

足腰に不安を

抱えるようになった時点で、

改修工事が可能なように

相応の空間を考えておく

という事も一策です。



車椅子で利用する

スロープの勾配は、

1/12(傾斜角度約5°)以下が望ましく、

特に屋外だと1/15(傾斜角度約4°)以下が

望ましいといわれています。



数値と感覚は異なるので

デザインを現場で昇華する事は大切です。

一般的な基礎の高さ

40センチに対して

1/15の勾配

150センチ進んで10センチ上がる、

スロープを設置しようとすると

長さ6メートルの

スロープが必要となります。



さらに高さ1メートルの

高基礎の家なら15メートルの

スロープを設置する事になります。



床下換気や

水害リスク低減と

将来の暮らしやすさの

折り合いをどう取るか?

これも予め設計者と

十分に相談すべき事になります。



訪問介護等を

想定した間取りにする。



高齢になっても

できるだけ自宅で生活し、

必要に応じて

訪問介護サービスを

利用することを

希望される方も

多くいらっしゃいます。



特に、

子世帯と同居している方は、

その割合がより

大きいのではと思います。



その為、家の間取りは

訪問介護を受けやすいように

しておくことも大切だと思います。



居室を玄関の近くにすることで、

ヘルパーさんが

出入りしやすくなります。



また、

デイサービスの利用や

通院などで

外出をする時にも助かります。



設備としては、

介護サービスに伴って

手を洗うなどの

必要性があるため、

居室内や居室に

隣接して洗面台を

設けておくと便利です。



「空いた後」も考えておく。



親世帯の生活スペースは、

いつかは先に「空く」事になります。



孫が世帯を持ったそのタイミングで

親世帯がいた場所に

子世帯が移り、

再び二世帯が

同居ということも

考えられますが、

必ずしもそうなるとは

限りません。



できれば、

単世帯になった時の事を

想定しておくのが

良いかもしれません。



都市部で交通の便がよく、

建築的に

分離しているならば、

空いた部分を

賃貸にすることも

考えられます。



また、

共用型であっても

リノベーションをすることで、

建物の一部を

店舗として

貸し出すことも考えられます。

※住宅ローンが残っている場合注意が必要。



一方、

郊外の住宅地などで

賃貸の需要が望めないのであれば、

単世帯で生活を

続けることにもなります。



しかし、

大きすぎる家だと

空間を持て余してしまいますし、

掃除やメンテナンスも大変です。



また、

光熱費や固定資産税も

必要以上に

支払うことになります。



このような問題を

抱えないためには、

新築時には

むやみに大きな住宅にせず、

必要十分な広さに

とどめておくことも大切です。



二世帯住宅づくりは

家族の将来像を

考える以上のように、

二世帯住宅づくりは

15年後、20年後、30年後に

家族がどうなっているかの

将来像を描きながら、

そのときに

必要になってくるであろう

間取りや設備を

あらかじめ織り込んで

いくことになります。



家族構成やご事情

健康状態などは

それぞれですから

これを真似すれば完璧

という成功パターンも

無いのが難しいところ。



僕自身も設計者の立場でも

住まい手の立場でも

様々な経験をしているので

その点、

実視点から

家族の将来像を共に描きながら

最適解の方法を

アドバイスできると考えています。



20年後、30年後に「しまった」と

ならないよう、

親と一緒に暮らす二世帯住宅をと

お考えになられたら、

まずは二世帯というよりも

「同居」について

考える事が大切です。

僕自身も現在も

二世帯住宅に住んでいます。



良い面、悪い面、

間取りの効能も含め

暮らしを考える意味を

お伝えする事は出来るかと思います。

過ごす空間の意味を丁寧に

デザインを大切にしたいと思います。



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 建築家 山口哲央

奈良県橿原市縄手町387-4(1階)

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