和モダン住宅の照明計画|建築化照明がつくる癒しとホテルライクな暮らし

やまぐち建築設計室

著者:やまぐち建築設計室(建築家・設計事務所/奈良県)
2026-01-29更新
和モダン住宅の照明計画|建築化照明がつくる癒しとホテルライクな暮らし
光に、癒される住まいという発想

和モダン住宅における

「建築化照明」と暮らしの質について。


家づくりのご相談の中で、

落ち着く家にしたい、

忙しい毎日を、

家に帰ったらリセットできる空間にしたい

そうした言葉を、

日々の対話の中でよく耳にします。



それは決して、

贅沢をしたいという意味ではありません。

むしろ多くの場合、

情報や刺激に囲まれた日常から、

一度距離を取りたい

そんな、

静かな欲求の表れだと感じています。



デジタルデトックスも同じですね。



けれど、その「落ち着き」や「癒し」が、

具体的に何によって生まれているのかを

言葉にできる方は、

決して多くありません。



素材でしょうか?

間取りでしょうか?

それとも、インテリアでしょうか?



どれもそうだと思います。

そして同時に、

それだけでは十分ではありません。



実はそれらと同じ、

もしくはそれ以上に、

私たちの感覚や

心に作用しているものがあります。



それが「光のあり方」です。



明るい家なのに、

なぜか落ち着かない理由・・・・・。



現代の住宅は、

断熱性能も高く、設備も整い、

「暗くて困る」という住まいは

ほとんど見かけなくなりました。



それでもなお、



・夜になると、なぜか目が疲れる

・リビングにいても、気持ちが切り替わらない

・空間は整っているのに、長く居たいと思えない



そんな違和感を覚える住まいが

あるのも事実です。



この違和感の正体は、

「明るさが足りない」ことではありません。



多くの場合、原因は

光の「量」ではなく、

光の「質」や「当たり方」にあります。



均一に、天井から照らす。

部屋全体を、同じ明るさで満たす。



合理的で、分かりやすく、

一見すると失敗のない照明計画です。



しかし、人の感覚は、

必ずしも合理性だけで

満たされるわけではありません。



人は本能的に、

強い刺激や単調な環境に、

知らず知らずのうちに緊張を覚えます。



視界のどこを見ても同じ明るさ。

逃げ場のない光。



それは無意識のうちに、

脳を「活動モード」のままに

してしまいます。



人は「光のグラデーション」に安心する



人の感覚はおおざっぱでありつつも

時間帯や心の状態によっては

とても繊細です。



・光の濃淡。

・影の奥行き。

・明るさが、ゆっくりと消えていく境界。



こうしたグラデーションのある環境に

身を置くと、

人は自然と呼吸が深くなり、

緊張がほどけていきます。



これは感覚論ではなく、

人が空間をどう知覚して、

どう安心を判断するかという

心理的なメカニズムとも

深く関係しています。



単調で均一な刺激よりも、

強弱や余白のある環境の方が、

人は「安全」「落ち着く」と感じやすい。



だからこそ、

光がすべてを照らし尽くす空間よりも、

光と影が共存する空間の方が、

私たちは無意識に

心地よさを感じている状態になります。



「照らす」のではなく、

「包む」という考え方で・・・・・。



やまぐち建築設計室が、

照明計画で大切にしているのは、

光で「照らす」のではなく、

光で「包み込む」という発想です。



・出来る限り直接光源が目に入らないこと。

・天井や壁が、やさしく光を受け止めること。

・空間の隅に、わずかな陰影が残ること。



こうした要素が重なったとき、

住まいは「眩しくない明るさ」を

持ち始めます。



これは、

数値で測れる照度とは異なる、

感覚としての快適さ。



人の視線が自然と落ち着き、

どこを見ても緊張しない。



その状態こそが、

「癒されている空間」だと私は考えています。



建築化照明がもたらす、

もう一段上の心地よさを設計するように。



ここで重要になるのが、

建築化照明という考え方です。



建築化照明とは、

照明器具そのものを主張させるのではなく、

建築の一部として光を仕込む手法。



・天井のライン。

・壁の厚み。

・梁や下がり天井の寸法。



それらと一体化することで、

光は「設備」ではなく、

空間の表情そのものとして立ち上がります。



今回のLDK空間提案でのCGでも、

天井と壁の境界に沿って、

やわらかな間接光が連続しています。



この光は、

単に明るさを確保するためだけに

存在しているのではありません。



・天井の高さを、

実寸以上に伸びやかに感じさせる

・素材の質感を、陰影によって引き立てる

・視線を分散させ、空間全体を穏やかに包む



そうした心理的な作用を、

担っています。



インテリアと照明は、切り離せない関係。



インテリアと照明は、

別々に考えられがちですが、

本来は一体で設計されるべきものです。



同じ家具、同じ素材でも、

光の当て方ひとつで、

感じ方はまったく変わります。



硬く見える素材が、柔らかく感じられたり。

重たい色が、軽やかに見えたり。




これは、

人が「物そのもの」ではなく、

光を通して物を認識しているからです。



だからこそ、

インテリアの計画と同時に、

照明の位置や光の質を考えることが、

暮らしの質を大きく左右します。



和モダンと照明は、なぜ相性がいいのか?



和モダン住宅において、

照明が特に重要な要素とされるのは、

決して偶然ではありません。



和の空間はもともと、

陰影を味わう文化の上に

成り立っているからです。



陰翳礼讃にあるように・・・・・。



・障子越しのやわらかな光。

・軒下の薄暗さ。

・床の間に落ちる、わずかな明かり。



日本の住空間は、

「すべてを明るく見せる」ことで

美しさをつくってきた訳ではありません。



むしろ、

見せない部分を残すことで、

想像力と落ち着きを育ててきました。



建築化照明によるグラデーションは、

その感覚を、

現代の住まいに

丁寧に翻訳する手法だと考えています。



ホテルライクな空間に共通する

「光のルール」をデザインするように。



「心地よい」と感じるホテルには、

ある共通点があります。



それは、

直接光源がほとんど

視界に入らないということ。



ラウンジも、客室も、

光は常にどこかで反射し、

面として空間に存在しています。



この「面の光」が、

人の感覚を刺激しすぎず、

自然と気持ちを落ち着かせます。



住宅においても同じで、

照明計画を少し丁寧に考えるだけで、



・家全体が静かに感じられる

・夜の時間を、自然と大切にしたくなる

・家族との会話のトーンが、穏やかになる



そんな変化が起こります。



照明は「後から決めるもの」ではない

ということ。



照明は、間取りが決まり、

内装が決まり、

「最後に考えるもの」と思われがちです。



しかし、実際には逆です。



照明は、

建築寸法・天井構成・家具配置と

同時に考えるべき要素です。



今回のような間接照明も、



・出幅が浅すぎれば、光は弱くなる

・深すぎれば、天井が重く感じられる

・建具や家具のラインと揃っていなければ、

違和感が生まれる



寸法という単位、

色や素材による光の反射判断が、

空間の印象と心理的な快適さを

大きく左右します。



だからこそ、

設計の初期段階から

照明を含めて考えることが、

結果的に

「無理のない、美しい住まい」につながります。



暮らしを整えるのは、

派手さではなく静けさであるということ。



やまぐち建築設計室が考える構築要素は、

写真映えするための

住まいではありません。



家に帰ってきて、

無意識に肩の力が抜けること。



夜、照明を落としたときに、

「今日も一日、よく頑張ったな」と

思えること。



その積み重ねが、

暮らしの質と心の在り処を

つくっていくと考えています。



そのために必要なのは、

強い主張ではなく、

丁寧に設計された「静けさ」です。



照明は、その静けさを支える、

とても大切な要素のひとつ。

実際に聞こえる音も

空間の趣で質が変化します。



光が変わると、

暮らしの質が変わるという事・・・。



もし、これから家づくりや

リノベーションを考えるなら、

ぜひ一度、

こんな視点を持ってみてください。



「どれくらい明るくするか」ではなく、

「どんな光に包まれて暮らしたいか」。



その問いに向き合うことで、

住まいは単なる箱ではなく、

人生を整える場所へと

変わっていきます。



やまぐち建築設計室では、

間取りやデザインだけでなく、

こうした「感度の設計」を

大切にしています。



光がやさしく、

時間がゆっくり流れる住まい。



その価値を、

形にした暮らしの趣を丁寧に。



今回の記事が、

小さなヒントになれば嬉しいです。



○関連blog
時間は人を待たない。だからこそ、住まいは人生の「在り方」から設計する

https://www.y-kenchiku.jp/blog_detail715.html

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