ダイニングテーブルの
置き方ひとつで、
暮らしの質は変わります。
住まいづくりを考えるとき、
多くの方が最初に思い浮かべるのは、
「間取り」
「広さ」
「設備」
かもしれません。
けれど、
実際に暮らしが始まってから
日々の満足度を左右しているのは、
もっと静かで、もっと身近な要素であることが
とても多いように感じています。
その代表例が、
ダイニングテーブルのレイアウトです。
ダイニングは、毎日いちばん使われる場所
ダイニングは、
食事をするためだけの場所ではありません。
家族が集まり、
会話が生まれ、
考え事をし、
ときには仕事や勉強、
趣味の時間にも使われる場所。
暮らしの中で
自然と滞在時間が長くなる場所でもあります。
だからこそ、
ダイニングの「あり方」は、
暮らしの質に静かに影響を与え続けます。
家づくりの相談で、よく聞く言葉
設計のご相談を受けていると、
こんな言葉を耳にすることがあります。
・今の家、なぜか落ち着かない
・家具が邪魔に感じる
・片付けても生活感が消えない
・家族がすぐにダイニングから離れてしまう
これらの原因は、
必ずしも「広さ不足」や
「収納が少ない」ことだけではありません。
多くの場合、
家具と空間の関係性が整理されていないことが、
無意識のストレスを生んでいます。
家具は「置くもの」ではなく「設計するもの」
特にダイニングテーブルは、
・動線
・視線
・滞在時間
すべてに影響する、
住まいの中でも非常に影響力の大きな家具です。
今回ご紹介している住まいでは、
ダイニングテーブルを
「あとから置く家具」ではなく、
最初から空間設計の一部として組み込む
という考え方で設計しました。
意識したのは、3つのポイント
・天井と床の「流れ」に沿わせること
・高さと距離感を揃えること
・動線のストレスを数値で管理すること
これらを丁寧に整理することで、
ダイニングは
単なる食事の場から、
**空間全体を整える“軸”**へと変わっていきます。
天井と床の木目が生む、自然な奥行き
この住まいの特徴のひとつが、
木目の美しい天井と、
落ち着いた色味のフローリングです。
木目には「方向性」があります。
人の視線は、無意識にその流れを追います。
ダイニングテーブルを
天井と床の木目方向に合わせて配置することで、
視線は自然と奥へと導かれ、
空間に伸びやかさが生まれます。
これは、
「広く見せるためのテクニック」ではありません。
人の感覚に素直な配置を
しているだけなのです。
小上がりとリビング階段がつなぐ、家族の気配
ダイニングの隣には小上がりリビング。
その一角に、リビング階段を設けています。
・小上がりに座る人
・階段を上り下りする人
・ダイニングで食事をする人
それぞれが違う行動をしていても、
「同じ空間を共有している」
という感覚が、自然と生まれるように
高さと距離感を調整しています。
距離が近いから安心するのではなく、
適切な距離だからこそ、心地よく伝わる気配
があると考えています。
通路幅がつくる、日常のストレスの差
ダイニングテーブルまわりの通路幅は、
壁際で約90cmを確保しています。
数字だけを見ると、
些細な話に感じられるかもしれません。
けれど、
・配膳するとき
・片付けるとき
・椅子を引くとき
・すれ違うとき
こうした日常の動作が、
ぶつからず、急がず、無理なく行える。
それだけで、
暮らしの小さなストレスは
驚くほど減っていきます。
テレビや照明が「邪魔をしない」という価値
壁掛けテレビや照明も、
あえて主張しすぎない位置に配置しています。
食事の時間は、
テレビが主役になる必要はありません。
けれど、
視界に入ったときに違和感がないこと。
空間の一部として自然に存在していること。
それが、
上質な暮らしに共通する
バランス感覚だと感じています。
違和感を感じる人ほど、暮らしへの感度が高い
これまで多くの住まい手と向き合う中で、
ひとつ感じていることがあります。
それは、
暮らしへの感度が高い方ほど、
小さな違和感を見逃さないということ。
・なんとなく落ち着かない
・無意識に疲れる
・整っているはずなのに満足感が続かない
こうした感覚は、
決して贅沢な悩みではありません。
むしろ、
本質を見抜く感覚があるからこそ
生まれる違和感だと思います。
家具選びの前に、考えてほしいこと
ダイニングテーブルを選ぶとき、
多くの方が注目するのは、
・デザイン
・サイズ
・素材
・ブランド
もちろん、どれも大切です。
けれど、その前に
一度立ち止まって考えてほしい問いがあります。
・どこを向いて食事をしたいのか
・どんな景色を日常にしたいのか
・誰の気配を、どの距離で感じたいのか
この問いが整理されていないままでは、
どれほど美しい家具を選んでも、
暮らしはなかなか整いません。
ダイニングは「暮らし方」が映る場所
ダイニングテーブルのレイアウトは、
単なる配置の話ではありません。
それは、
どんな暮らしを大切にしたいかという意思表示
でもあります。
派手さではなく、
静かな整いを重ねていくこと。
その積み重ねが、
暮らしの質をつくっていくのだと思います。
最後に
ダイニングテーブルは、
暮らしを映す鏡のような存在です。
何を眺め、
誰と過ごし、
どんな時間を大切にしたいのか。
その問いに向き合うことが、
住まいの本質を整えることにつながります。
もし、
「間取りは悪くないはずなのに、
どこか違和感がある」
そんな感覚をお持ちでしたら、
家具の配置から、
暮らしを見直してみてください。
住まいは、
いつからでも整え直すことができます。
このブログが、
皆さん自身の暮らしを見つめ直す
きっかけになれば嬉しく思います。
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建築家 山口哲央
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