二世帯住宅が成功するために知っておくべきこと

片山正樹建築計画事務所

著者:片山正樹建築計画事務所(建築家・設計事務所/東京都)
2022-01-04更新
二世帯住宅が成功するために知っておくべきこと
近年、二世帯住宅をつくる人が増えています。子世帯にとっては親が所有している土地に建てれば土地代がかからず、親世帯にとっては老後の面倒をみてもらえるなどのメリットがあります。一方でプライバシーの干渉や、生活スタイルの違いなど解決すべき問題もあります。どのようにすれば二世帯住宅は成功するのでしょうか?二世帯住宅のデメリットはあらかじめ知っておくことで対処ができるものが多くあります。ぜひ参考にして二世帯住宅を検討してください。

1. 二世帯住宅のメリット
(1)土地を買う必要がない
(2)建築コストを安くできる
(3)維持費や生活費を安くできる
(4)お互いに生活を助け合える
2. 二世帯住宅のデメリット
(1)費用の分担を決める必要がある
(2)生活のルールを決める必要がある
(3)生活のサイクルや生活習慣の違いがある
(4)親族に話をしておく必要がある
3. 二世帯住宅の間取りのメリットデメリット
(1)完全分離型
(2)一部共有型
(3)同居型
4. 依頼先の選び方
5. まとめ

1. 二世帯住宅のメリット
(1)土地を買う必要がない
親がすでに土地を所有している場合は、新たに土地を購入する必要がありません。所有している土地が子世代が育った土地であれば慣れ親しんだ場所であり、近所に知り合いも多くその後の生活の不安も少なくなります。所有している土地の広さによっては、完全分離型などが難しい場合もあります。

(2)建築費用を抑えることができる
親子でのローンや資金贈与をすることで、ローンを減らすことができます。水回りや玄関を共用にするなど、親と子で別々に2棟建てるよりも、建築費用は安く抑えることができます。

(3)維持費や生活費を安く抑えることができる
二世帯で別々に生活するよりも、水道光熱費や建物の維持費を安く抑えることができます。自動車は共用の1台にする、食事を一緒にとる、など生活スタイルを工夫することでさらに費用を抑えることができます。

(4)お互いに生活を助け合える
親にとっては、年をとって生活が不自由になったときに、手助けしてもらえるメリットがあります。子にとっては、子供の世話をお願いしたり、子育ての相談にのってもらうことができます。親子だからこそ安心して頼ることができ、介護や託児所の費用も安くなります。


2. 二世帯住宅のデメリット
(1)費用の分担を決める必要がある
水道光熱費や建物の維持費など共用スペースの費用はどちらがどの程度分担するのか決めておかないと、トラブルの元になります。外壁塗装など双方が同意しないと進めることができない事は遅れがちになり、結果として建物の寿命を縮めてしまいます。あらかじめ費用をどのように分担するのか決めておくことが重要です。

(2)生活のルールを決める必要がある
水回りやキッチンなど共用としたスペースがある場合は、お互いに使い方のルールを決めておく必要があります。お風呂は誰が掃除してどちらが先に入るのかなど、細かいことですが毎日起こることなので不満がないように決めておくことが重要です。

(3)生活のサイクルや生活習慣の違いがある
親世帯と子世帯では生活のサイクルや生活習慣に違いがあります。手助けのつもりがプライバシーを干渉されたと思ってしまうことがあります。また、子供は成長につれて自立していき、親世帯は介護が必要になってくるなど、時間が経つにつれて生活は変わっていきます。お互いに日頃からコミュニケーションを心がけ誤解がないようにすることが大切です。

(4)親族に話をしておく必要がある
将来の親の介護や相続の問題もあるため、同居する家族以外の親族にも話をしておく必要があります。他にも親と同居を望む兄弟がいるかもしれません。その場合は多世帯住宅にすることも考えられます。土地の所有者が複数いる場合には、それぞれに許可をもらっておく必要があります。


3. 二世帯住宅の間取り
二世帯住宅は2つの世帯の専有スペースと共有スペースに分かれ、建物のどの部分を共有とするのかが重要になってきます。共有部分が多くなれば、各室の面積を広くすることができ、建築予算は低く抑えることができ、世帯間のコミュニケーションは増えますが、お互いのプライバシーが干渉します。まずはどこを共有するか、どんな間取りでどんなメリットデメリットがあるのか見ていきましょう。

3-1. どこを共有するか?
敷地や予算に余裕がありできるだけ干渉したくない場合は、共有スペースのない完全分離型をおすすめします。敷地や予算に制限がある場合には共有スペースをつくることになります。共有スペースは滞在時間が短い場所から決めていくことをおすすめします。互いに干渉する機会が少ないですし、使う時間のルールを決めることで対応できます。(POINT:共有スペースは滞在時間が短い場所から)
玄関→浴室・洗面→トイレ→キッチン→ダイニング→リビングの順に共用スペースを増やしていきます。


3-2. 間取りのメリットデメリット
次に各空間を共有した時にどのようなメリットデメリットがあるのか見ていきましょう。

(1)完全分離型
共有スペースをもたず二世帯が壁・床一枚で繋がっているパターンです。中庭やバルコニーを共有してコミュニケーションをとることもできます。
・メリット:
お互いのプライバシーは確保され、気兼ねなく自由に暮らすことができる
トラブルが発生しにくい
将来、賃貸として貸すことができる
・デメリット:
広い敷地が必要になる
建築費用がかかる

完全分離型は1階と2階で上下に分けるパターンと左右で縦に分けるパターンがあります。
上下に分けるパターンは階段の昇り降りを考慮して、親世帯が1階、子世帯が2階にすることが多くあります。2階の音が1階に響く問題があり、2階床の防音が重要になります。
左右に分けるパターンは、階段が二つ必要になり敷地がより広く必要になります。

(2)一部共有型
玄関のみ共有のパターン、玄関+浴室・洗面を共有のパターン、玄関+浴室・洗面+LDKを共有のパターンがあります。
・メリット
スペースや予算を抑えることができる
玄関のみ共有であればトラブルは少ない
・デメリット
共有スペースのルールを決める必要がある
気遣いが必要になる
LDKまで共有するとトラブルが多くなりがち(次の同居型とほとんど変わらない)

(3)同居型
玄関・浴室・洗面・LDK・トイレまですべて共有し、個室のみ個別にするパターンです。1軒の家に同居しているスタイルです。
・メリット
スペースや予算を抑えることができる
お互いに助け合い、介護や子育てがしやすい
・デメリット
コミュニケーションを多くとらないとトラブルになりやすい
親世帯が部屋に引きこもりがちになりやすい

4. 依頼先の選び方
家族内で二世帯住宅にしようと話がまとまったあと、依頼先はどのように決めたら良いでしょうか?二世帯に限らないことですが、家づくりの依頼先は設計者と話が合うか、信頼できるかが重要です。特に二世帯住宅では親世帯と子世帯との打合せが必要です。外観などでは親子で反対の意見となることがあります。両者の間に立って話をまとめ、さまざまな提案をしてくれる設計者を探しましょう。

5. まとめ 
より良い二世帯住宅へ向けてイメージが湧きましたでしょうか?
二世帯住宅成功のPOINT
・予算、敷地に制限がある場合は同居型〜一部共有型
 共有のルールを決める。
・プライバシーが干渉されたくない場合は完全分離型
 予算、敷地の広さがを検討する。
著者:片山正樹建築計画事務所(建築家・設計事務所/東京都)
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