著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)
2021-08-13更新
■清少納言も織田信長も、寒かった
暖冬もあれば、毎日氷点下になることもある日本の冬。
「暖かい家が欲しい!」と切実な声が届く季節です。
冬暖かい家を作るコツは、はっきりしています。
室内の熱を逃さない、室内の表面温度を下げない、太陽熱を取り入れる。
ところが、事態を難しくするのが高温多湿の日本の夏。
猛暑が毎年のようにやってくる今、室内の高い温度を保つ家は、夏にはとても住みにくい家になってしまいます。
冬には北欧の家のように隅々まで暖かく、夏は沖縄の家のように風が吹き抜ける。
冷暖房効率が良く換気が行き届く家は、一年を通して快適な家と言えるでしょう。
また冷暖房効率のいい省エネの家は、健康的で耐久性のいい、コストを低く抑える家にもなります。
「ゼロエネルギー住宅」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
これは省エネだけでなく、エネルギーをつく出す家を指します。
エネルギー創出と省エネのバランスが取れれば、エネルギー消費がプラマイゼロ、つまり「ゼロエネルギー住宅になる」と言う考え方です。
エネルギー創出の方法を太陽光発電とすることが多く、FIT問題で(太陽光電力の買取価格下落)ブームは落ち着いてきたように見えますが、住宅から環境問題に貢献する先進的な考え方です。
住宅の省エネ化を積極的に取り入れて、環境にもコストにもそして健康にもいい家を実現しましょう。
日本の伝統家屋は、外気温に影響されやすい作りでした。
風通しの良さは空気の通りやすさであり、床下から、壁から、窓から、屋根や天井からも、冬の寒さが室内に侵入する作りでした。
歴史上の人物も、冬の寒さには悩まされたことと思います。
夏は暑さが、窓や屋根、壁からも室内に侵入します。
家の作り方による自然な空気の出入りが換気を促す反面、冷暖房効率を損なうことにもつながっていました。
この意図しない空気の流通を極力抑制し、換気は温度変化が起きにくいように管理することができれば・・・。
冬暖かく夏涼しく、室内はいつも新鮮な空気に満たされる。
そんな健康的で耐久性のいい、省エネ住宅を実現できます。
資源エネルギー庁のサイトに「冬の暖房時に外に熱が逃げる割合の例」と言う図があります。 熱の逃げ方の一例ですが、冬にはおよそ半分の熱が窓から逃げていくと書かれています。
同じく「夏の冷房時に外から熱が入る割合の一例」では、なんと70%以上の熱が窓から侵入しています。
ガラス窓は外壁と比べると、断熱性能で大きく劣るからです。
断熱性能を上げるためには窓を極力減らす、と言えそうです。
しかしそれでは陽の射さない、暗く閉塞感のある家になりかねません。
次回以降、明るく快適な省エネ住宅への道を探ります。
このコラムは、注文住宅を計画する方の参考になることを目的に、弊社の経験に基づいて書き下ろします。
トピックス、技術、経験の内容は、主観に基づくことをご了承ください。
著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)