著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)
2021-08-13更新
そもそも「断熱」てなんでしょう?
それは、建物に出入りする熱を断つこと。
断熱の重要性は、日本の風土と建築の関係にあります。
国土の大半が、温暖で湿潤な温帯に位置する日本。
温度が季節によって極端に上下する気候でもあります。
夏に心地いい家は、風通しが良く温度と湿度を自然に調整できる家。
冬には暖かい室内温度を維持できる家が好ましい。
家を建てる時、1軒の家に、正反対の環境に対応できる機能が求められます。
「暑さ=熱の過剰」と「寒さ=熱の不足」両方への対応。
つまり外部環境から建物内部に侵入する「熱」をコントロールすれば、「快適な室内環境」=「快適な家」を作れるはず。
断熱は家づくりの重要なポイントなのです。
断熱を考える際に避けて通れないのが、熱の出入口の特定です。
家の中で熱が出入りしやすい部分と言えば、
1 窓や扉 多くの熱が出入りする
2 外 壁 断熱材の隙間やズレが発生しやすい
3 換気扇 外気がそのまま出入りしやすい
4 床と屋根 断熱材が薄い、そもそも断熱材のない家も多い
これらの断熱性能を高めれば、一年を通して快適な室内環境を実現できるはずです。
ところで、このようにポイントがはっきりしているのに、依然として日本には断熱性能の低い家が多いのはなぜでしょう。
それはこの「断熱」という概念自体、新しい考え方であることに尽きます。
また「風通しがいい」という言葉は、「風通しのいい組織」など、どちらかというといい意味で使われてきました。
高温多湿の日本では、断熱の基本要素である空気の出入りの少なさは、「空気がよどむ」」ジメジメする」と悪いいイメージしかなく、兼好法師を待つまでもなく、風通しのいい家こそいい家の代表だったのです。
改めて断熱性能の高い家を考えると、それは空気が出入りしない窓のない家・・・蔵みたいな家でしょうか?
旧家の「蔵」は、窓を極端に減らして、壁を分厚く作り、熱の出入りを最小限に抑えた断熱のための建物です。
温度を一定に保つための工夫ですが、現実には蔵の中で暮らすことはできません。
建築基準法では住まいの窓面積は部屋面積に対する一定割合が決められおり、蔵ではその基準を満たせないからです。
また、日射のない部屋での生活には健康被害も予想されます。
理想は、日光の恩恵を受けながら、外気の熱を制御できる家。
快適な季節には風通し良く、過ごしにくい季節には外気を遮断できる家。
それが、窓には熱の出入りしにくいサッシを使い、壁には隙間なく高性能断熱材を使用し、床と屋根の断熱にも気を配った「高気密高断熱の家」です。
著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)