厚い外皮で断熱

アーキシップス京都

著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)
2021-08-13更新
厚い外皮で断熱
が分断され、広さや開放感は感じにくいかも。
せっかくの敷地を小さく使うのはもったいない気がしますが、背景には従来の日本の家屋の断熱性能の低さがありそうです。
玄関や廊下が寒いから区切る、区切るから狭い・・・。

断熱性能を高めれば、空間を細かく区切らずとも、暖かく、広々した、自由度の高いプランが可能です。
住宅全体の断熱性能を高めることで、広い空間や吹抜けも可能な、オープンな間取りを楽しむことができます。

住宅の高気密高断熱化の要諦は、
1 断熱 外壁・屋根天井・床の断熱材で、熱・冷気の出入を防ぐ
2 気密 開口部(窓や扉)や屋根天井・壁・隙間の、空気の出入を防ぐ
3 換気 室内温度を保持できる換気扇を採用する
この3点を同時に進めることで、気密断熱性能の向上は図れます。

外壁の断熱から検討しましょう。
冬は外壁からの侵入が、家に入る冷気の30%を占めます。
外気の影響を最小限にする工夫が壁の厚みで、その典型は旧家の蔵でしょう。
蔵の壁は竹と縄を編んだところに土を塗って絡ませて、それを何重にも重ねて、厚みは数十センチに及びます。 土は天然の断熱層、地中のように厚い土の層で守られる蔵は、一年を通して温度が安定すると言われます。
残念ながら昔ながらの湿式の壁は時間もコストもかかるので、住宅建築の現場では採用されませんが、断熱性能の高い壁を作る目的で様々な技術が開発されています。

一般的な建売住宅では、グラスウールやロックウールの断熱材を柱の間に挟み込んで、断熱層を作ります。 しかし固形の断熱材には、取り付けの過程で隙間やズレが生じやすい問題がありました。 断熱材の隙間ができると、冬の冷気が壁の中に入り込み、断熱効果が薄れるだけでなく、壁の中で結露が生じてカビや腐食の原因にもなります。
そこで近年、注文住宅の現場では、発泡性の断熱材を吹き付ける方法が広く採用されるようになりました。
筋交いや配線の隙間で固形の断熱材が施工しにくく、外気の抜け道になりやすかった部分も、溶液を吹き付けて発泡する断熱材で隙間なくカバーできるようになりました。

さらに断熱効果を高める方法として、室内断熱にプラスする形で、外部に断熱材を外張りする方法も増えてきました。
イメージとしては、室内の断熱を施した建物に、固形の断熱材を外から貼り付けて魔法瓶のように建物を包み込む断熱です。
二重の防御という意味で、弊社では「ダブルバリア」と呼んでこの方法を推奨しています。

断熱といえば水平方向に広がる壁を考えますが、上と下、垂直方向の断熱も外せないポイントです。
「おばあちゃんの家に行くと足元がスースーする・・・」
なんて、感じたことはありませんか。
あるいは築年数が経ったマンションの最上階、真夏の暑さに閉口した経験は?
長く断熱に関心が薄かった日本の住宅事情ですが、特に垂直方向の断熱は重要視されてこなかったので、屋根(天井)と床(基礎)に断熱材が入っていない建物が今だに多いのが実情です。
注文住宅では、暑さ寒さをコントロールして、一年を通して快適な室内環境を作ることができます。
適切な断熱で、「家が一番気持ちいい!」と思える空間を実現したいですね。

著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)
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