秋月は武家屋敷跡、町家建築等が周囲の豊かな自然・田園風景と相俟って、城下町らしい歴史的風致を今なお残す。
敷地は「秋月重要伝統的建造物群保存地区」内、旧街道沿いより僅かにはいった山裾にある。
墨色に染めた杉板外壁に、寄棟大屋根を乗せた外観は、伝統的な屋根形状、外壁仕上げ、各ディテール等を参照し景観との調和を図りながらも、新鮮な魅力をもったものでありたいと考えた。軒先、各部分のプロポーション等には細心の注意を払い、深い森の緑を背景に、かつての秋月藩士のごとく凛として佇むよう願った。
プランは共用のLDKを挟んで東側の子世帯ゾーンと西側の親世帯ゾーンに分かれる。主室であるLDKは梁・柱を剛接合とし、心地よい緊張感の中、おおらかでゆったりとした無柱の大空間となっている。隅に配した各個室の出窓を腰掛けることのできる高さとし、格子が適度な目隠しとなりつつ、それぞれ趣の違った景色を楽しむことができる。
主要な壁・天井仕上げは漆喰塗仕上げとしている。白い柔らかな質感にくるまれた内部空間は、季節の変化に富んだ外部環境とは要素の単一さにおいて対照的である。しかし、刻々と移り変わる光や緑を取り入れ映し、豊かに歴史と自然を感じる住まいとなっている。
外観
外観(※)
アプローチ
玄関
キッチン・ダイニング
リビングよりホール
リビング
和室
リビングダイニング夕景
外観夜景