《行き交う視線 回遊する住まい》
この住まいはみどり豊かな山村地域に建設されました。各コーナー部に設けた開放的な窓からは異なった自然や山村の景色が眺められます。住まいのそれぞれの部分は互いに孤立してしまうことのないように、壁や建具で間仕切られることなく45度に傾けて設けられた水回りのコアによって緩やかに分節されています。あたかもそれぞれの部分は互いに背を向け合っているようでいながら、常につながりを感じ、全体が一つのまとまりであるように空間が巡っていきます。
住まいの中心には便所・浴室を設け、洗面を通り抜けの路としています。居間と寝室をつなぐ2つの動線の一方を食事のスペースとし、もう一方のいわば抜け道をサニタリーゾーンとして、どちらからも行きやすくしています。すべてがひとつながりの空間ですのでどこも同じ暖かさ、冬の廊下・トイレの寒さを感じることがありません。冷暖房をまかなうために小さな空間としつつも、開放的で狭さを感じさせないつくりです。
室内の床には段差・敷居は設けず柔らかく暖かい杉の厚板を張っています。土間は滑りにくい豆砂利洗出し仕上げとしスロープや腰掛けを設けました。天井は45度に振られて変化に富む小屋組みを杉材の露し仕上げとし、壁は窓の外に広がる景色を妨げない白い塗り壁として吸湿作用も持たせました。
この住まいは、岐阜県の「みどりの健康住宅」のプロジェクトの高齢者向けモデル住宅として、設計競技を経て建設されました。