二子玉川の駅から10分程の静かな分譲地に建つ在来木造の2F建て(一部ロフト有り)です。
向かいには某有名ミュージシャンの自邸が建っています。
設計スタート時は基本的な部屋数と、とにかく「センスのいい家」くらいしか要望がありませんでしたが、実施設計がある程度進んだ段階で「南側に大きな窓が欲しい」という要望がでました。
実施設計がある程度進んだ段階での変更は全体スケジュールもあり正直大変でしたが、家は基本的に一生に一回の大きな買い物。妥協してはいけないと思いました。
リビングとリビングの吹抜けの南側に鉄工所で特注製作した鉄製の大開口を設置しガラス張りのカーテンウォールを設計する事でさんさんと光の降り注ぐ、ご要望通りの明るいリビングとしました。
カーテンウォール内部には縦型ブラインドを設置し内部のプライバシーにも配慮。
このブラインドには光量を調整する効果もあり、時と場合によって光と影の美しいコントラストを見ることが出来ます。
外部内部共に基本的に白を多様して所々に「さし色」を入れる事でデザインを引き締めつつ、お施主さんの選ぶデザイナーズ家具や気の利いた置物が空間のアクセントとなるよう意図しています。
融資の関係でスケジュール的に竣工時期が決まっている関係で全体スケジュールが厳しく、かつ南側に大開口を作った事で家全体の構造体を在来木造で成立させるのが難しかったり、クリアしなければならない壁がいくつかありましたが、終わってみれば心地よい空間が出来て、良いプロジェクトになりました。
南側の外観です。シンプルかつミニマルなデザインにまとめています。 外壁の下地はモルタルでその上に塗り壁の仕上げです。 一番高い所にある横2枚のガラスが鉄工所で特注製作した鉄製のカーテンウォールです。 内部はリビングの吹き抜けに面しています。 その下の右に位置するガラスも鉄工所で特注製作したサッシで、その左に位置する引き違い窓だけ既製品を使っています。
夕方になると内部の光が柔らかに外部に溢れ、個人住宅ではないような表情を見せます。
写真の右側が南方向になります。 中から見た方が南側の大開口が大きい様子がより認識出来ると思います。 正面の壁の向こう(奥)は小屋裏(ロフト)に上がる階段があります。 左の壁はアクセントの壁で黒板塗装を塗っているので学校のようにチョークで壁に自由に書く事が出来ます。 左の上は小屋裏(ロフト)で落下防止のガラスがはめ込まれています。 上部中央には天井からシンボリックなペンダントライトが吊るされています。 壁と天井を意図的に白を多用しているので、床は少し個性的なフローリングを採用し空間を引き締めています。
2Fのリビングからキッチンダイニング方向を見ている夕景です。 ワンルームのすっきりしたLDKです。一番奥がキッチンです。 ガラスが多いので個人住宅というかギャラリーや美術館のような雰囲気を感じます。 右奥は洗面所とお風呂が配置されています。 吹き抜けの天井から吊るされたペンダントライトがシンボリックに空間を引き締めます。
キッチンは全体のコストコントロールの意味もあり、ここではシステムキッチンを採用しています。 キッチンの右側に位置するカウンター(下部収納)は寸法をジャストサイズで作る必要があったため、家具屋さんに特注でオーダーして制作してもらっています。 奥が洗面所です。洗面台を床から少し浮かせる事で浮遊感を出しつつ、少しでも広く見えるように配慮しています。
基本的に白でまとめられたシンプルな主寝室です。 奥の壁面収納はジャストサイズで作る必要があったため、デザインして図面を書き、それを元に家具屋さんで特注で作ってもらっています。 手かけの類が一切ないデザインなので壁のように見えるように配慮しています。 奥の右側にはデスクスペースが配置されていて、ちょっとした事で様々な用途で使えるよう意図されています。
ガラス張りの小屋裏(ロフト)とは思えない小屋裏(ロフト)です。 天井高さは高い方で1m40cmで小屋裏(ロフト)として認められる最大寸法に設定しています。 小屋裏(ロフト)は1m40cm以下であれば建築基準法で「階」にならず容積対象床面積にも入りません。 逆に1m40cmを超えると「階」に算定されてしまうので、容積対象床面積にも入りつつ、このプロジェクトの場合3F建て扱いになるので、逆に様々な規制が発生するため、あえて1m40cmで抑えて小屋裏(ロフト)として認められる形にしています。 右がリビングの吹き抜けです。ガラスは落下防止の役割を果たしています。 左の引き違い窓からルーフバルコニーに出られる動線になっています。
真っ白いルーフバルコニーです。 お隣さんの緑がちょうど良い借景になっています。
洗面台と上のミラーボックスもデザインして設計する事でそれを元に家具屋さんに特注して作ってもらいました。 洗面台とシンクは人口大理石で一体で作ってあるので、汚れが付きにくく非常に掃除が楽です。 ミラーの奥に仕込んだ間接照明が家の中にいながら非日常感を演出しています。 シンプルな洗面所です。
縦の長さの長いブラインドが個人住宅でありながらギャラリーのような美術館のような高級感を演出します。 ブラインドの羽を回転させる事が出来るので、内部に導く光の量を調整する事が出来ます。
私自身、建築に関する仕事をしているので、設計が進んだ段階での大きな変更は難しいと思っていました。他のハウスメーカーだと拒否されたと思います。あの段階で要望を聞いてくれてかつ新しい提案をしてくれたことに感謝しています。保坂さん(設計者)は時には居酒屋でくつろぎながら希望を聞いてくれたりと、人としてきちんと対話ができました。
設計段階でだいたいのイメージはできていたのですが、完成して改めて見てみたら「これは自分の欲しかった家だ」と思いました。光や風の入り方は図面だけでは想像できなかったけれど、最高のものが出来ました。