東京都浅草合羽橋商店街に位置する11F建ての自社ビル9Fフロアのフルリノベーションです。
お施主様のプランに対する希望は、下記の5つでした。
1. リビングの確保
2. 広いLDK
3. 収納能力の拡充
4. 大きなアイランドキッチン
5. リビングと一体空間になるテラス
ご要望に対する回答として、既存ダイニング横の和室をリビングにして、その和室のさらに奥で孤立していた納戸を来客時だけ客間になって普段はリビングとつながった空間になるよう4本の引き戸でやわらかく仕切りました。
結果、48畳の大空間のLDKを確保しました。その広いLDKのベストな場所に1m×3.4mの巨大な特注アイランドキッチンを配置しました。
既存ダイニングとテラスの間のサッシはFIX(開かない)範囲が多かったのですが、ビル用のサッシを使用して(ビル用サッシの方が木造サッシより大きなサッシが作れるため)大開口を確保しLDK床とテラス床をフラットに仕上げる事でお互いが一体の空間になるよう配慮しています。LDKとテラスで57畳の大空間になります。
既存の大きな寝室を半分を寝室、半分を書斎とWICにしてバランスを取ると共に日常の動線も考慮しました。
仕上げに関しては高級感のある素材や深みのある素材をご希望されました。
収納能力の拡充がご要望の一つとしてありましたので、LDKを壁面収納で覆う事で収納能力を確保しました。
その壁面収納の仕上げ材は考えられる様々な建材を検討した結果「石の突き板」に行き着きました。
石の突き板とは実際の石切場で天然石を薄くスライスして表面に使い、裏地に強固な裏材を使用した材の事を指します。
この石の突き板が天然ゆえに一枚一枚質感も異なりますし色味も違う素材なので貼り合わせた時に非常に上品で高級感のある雰囲気になりました。
元々はダークグレーくらいの色味ですが、より黒くするために様々な塗料を試し、結果「トップコート」という透明の塗料を表面塗布してさらに黒みを出しました。
LDK天井は様々な仕上げ材を検討した結果、一般的には床で使用する「ウォールナット突き板」に行き着きました。
天井に濃いめの色を使う事でラグジュアリーな大人の空間に仕上げています。
床はキッチンの石の突き板と天井のウォールナットとバランスを取る建材を検討した結果、薄いグレーの600角タイルを採用しました。
一枚一枚質感の異なるものを選んだので全体で奥行き感のある落ち着いた空間になっています。
細部に至る処まで徹底的にこだわり抜きデザインし、ここにしかない空間と質感のある家に仕上がっています。
48畳の大空間LDK。一番奥の空間は手前の4本の引き戸で仕切る事の出来る客間。手前の左側は1m×3.4mの巨大な特注アイランドキッチン。キッチン天板は「アラベスカート」という天然石。扉の表面は「石の突き板」。床は600角のタイル。天井はウォールナットの突き板。右側が外部のテラス。
1m×3.4mの巨大な特注アイランドキッチン。壁面収納がキッチンを囲うように配置されていて、上部に間接照明が仕込まれています。
手前から、バーベキューグリル、IH(電気)、ガスコンロの配列で様々な料理や料理器具に対応出来るよう配慮されています。壁面収納の天板もキッチン天板同様にアラベスカート(天然石)です。壁面収納のバック(背面)パネルにはステンレスバイブレーションを使用しインテリアを引き締めています。
左側がEV。表面にダイノックシートいうシート状で裏に粘着機能のあるシートを貼って仕上げています。正面が入り口の玄関ドア。スチールで特注して表面に木の突き板を張っています。右の壁は既存にタイルを張り、上部の天井に間接照明を仕込む事でエントランスの緊張感を演出しています。床は土足ゾーンではありますが、フローリングを採用しています。
エントランスポーチから内部に入ったエントランスです。左側は靴入れ。扉の表面材はキッチンと同じ「石の突き板」で統一感を出しています。バック(背面)パネルはここでは玄関なので機能的に鏡を採用しました、奥のシルバーの扉は特注製作し表面にシルバーの塗料で仕上げています。左側のドアがトイレ。右のドアの向こうは洗面です。床は土足ゾーンではありますが、室内と連続感を出す意図であえてフローリングにしています。
上足ゾーンからエントランスポーチ方向を見ています。右が靴入れ。上下に間接照明を仕込んでいます。
LDKの床とフラット(平ら)に仕上げられたバルコニー。奥にはスカイツリーが見え、ここが9Fだという事が認識出来る豊かな空間です。右のガラス手摺は既製の手摺。天井(軒)は室内と同様、木の板を貼っています。
洗濯機を左の扉の奥に収納する事でパウダールームの生活感を無くしています。基本的に床壁天井全て白の中で、洗面台は木の突き板を採用する事でアクセントを意図的に作っています。混合水栓やレバーハンドルなどポイントポイントで黒を採用している所が遊び心です。
UB(ユニットバス)ではなくて現場で組み立てて作った在来浴室です。床壁天井全て白のミニマルな空間の中にアクセントで黒のシャワー水栓をあえて選択しています。横長の鏡が空間を引き締めます。
パウダールーム方向を見ています。パウダールームとの仕切りであるドアは強化ガラスの一枚ドアで連続感を演出しています。天井に仕込まれた間接照明が非日常を演出しています。
輸入家具の会社を経営していて、仕事柄、腕の良い設計士は知り合いにもいっぱいいます。でも、仕事とは切り離してリノベーションを楽しみたいと思っていました。その点、保坂さん(担当者)は話も相談もしやすいですし、センスも仕事への姿勢も信頼していました。
既製品は使わないこと。素材からこだわって、保坂さんと打合せを重ねました。例えば、キッチンの天板に使用している大理石も、食器を扱う仕事をしている妻が、最も食器の美しさを表せる石として、ずっと考えていたものです。
キッチンの扉や家具にも天然石の突き板を使用していて、一枚一枚に深みと個性があるのが気に入っています。素材にこだわり抜いたため、トータルでは当初の予算を大幅に上回ってしまったのですが、それでも、クロスなどは一切使用しませんでした。一つでも妥協してしまうと、全体が台無しになってしまうからです。
リビングで過ごす時間が増えました。テラスと一体感があって開放感のあるLDKは、朝の気分から違います。夕食の後も、夫婦でお酒や甘いものを楽しむことが多くなりました。ソファーでテレビやビデオを見たり、寝転んだりしてなんとなく過ごす時間が一番好きです。
動線も考え抜かれていて、本当に使いやすいです。無駄なスペースがなく、家じゅう隈なく使えるので、以前と同じ敷地面積の家に住んでいるとは思えません。収納も壁面収納で工夫され、趣味で集めた食器もたっぷり入るので気に入っています。
保坂さんにはいろいろ無理も言ってしまったと思いますが、本当にお願いして良かったと思っています。私も仕事でレストランなどの施工に携わりますが、プロとして納得しています。打合せの時から本当に楽しかった。そして、住むほどにじわじわと良さが伝わってくる家です。