「不足の美」
株式会社七葉は「抹茶」という切り口から、「新しい日本のカタチ」を世界に発信している会社である。
良質の抹茶を、抹茶ラテなど現代的にアレンジしたメニューで提供している。
そして、その店内に求められる空間は「和風」ではなく「現代の茶室」である。
それは、オーナーの言葉を借りれば”日本に昔からある茶文化を現代的な解釈で楽しめる店”をつくりたいという思いの表れである。
わび」という言葉は、動詞の「わぶ」(「気落ちする・つらいと思う」などの意)から出た言葉で、「さび」は動詞「さぶ」(「古くなる・色あせる」などの意)から生まれた言葉である。
「わび」という言葉の根元には「思い通りにならないつらさ」があり、「さび」という言葉は「生命力の衰えていくさま」という意味がある。
こうした否定的な感情をあらわす言葉が、平安時代から鎌倉時代に至る和歌的世界で、閑寂・簡素・枯淡の境地として生み出され、「美を表す用語」として茶の湯の世界でも広がった。
これは、日本人独自の美意識や文化のとらえ方と言える。
また、わび茶の祖といわれる村田珠光は、「月も雲間のなきは嫌にて候」という文章を残した。
(満月の皓々(こうこう)と輝く月よりも雲の間に見え隠れする月の方が美しいという意味である)
そこでnana’s green tea天王寺ミオ店では珠光の創造した、不足の美の空間を再現しようとした。
実際には、下地材として使われるOSB材やコンクリートブロックなどを意匠材として用いることで、未完のものこそ美しいという日本人の美意識を表現した。