井の頭線「池の上駅」から徒歩10分弱の高低差のある住宅街に位置する在来木造2F建て、3棟の分譲住宅のA棟です。
「緑と共に生活する新しい分譲住宅」
3棟の全体構成は、様々な特徴や個性を持った「内部空間=へや」と様々な特徴や個性を持った「外部空間=にわ」が、パズルを組み合わせるようにそれぞれ寄り添い集まり全体を構成していいます。
「外部空間=にわ」には様々な樹木やグランドカバーなどの「Green」が配され、その「Green」と呼応するように建築の外壁や土留の擁壁は全て意図的にシンプルな「White」で塗り込められています。
庭の「Green」と建築の「White」とのコントラストで構成された新しい分譲住宅の提案です。
「3棟設計のこだわり」
3棟同じ要素で全体を構成するのではなく、1棟1棟の形・プラン・特徴・空間・庭などの要素が全て異なる「個性」を持っていて、その全て異なった要素がそれぞれ寄り添い集まり全体を構成しています。
1棟1棟がそれぞれの特徴や「個性」を保有し寄り添い集まる事で3棟で1棟のような不思議な全体像を演出しています。
3棟を同時に設計する事で戸建て住宅では作り出せない3棟だからこその魅力的な創造溢れる空間が敷地全体に散在している分譲住宅です。
「高低差を生かす事で獲得した眺望」
本プロジェクトは「第1種低層住居専用地域」という建築基準法の規制が最も厳しい地域に位置します。
眺望を獲得するための一つの手法は階数を重ねて3F建てかそれ以上にしていく事ですが、この敷地で3F建てを設計すると新たにクリアしなければならない規制が発生し、高く大きく設計したい意図とは逆に小さな設計になってしまいます。
今回この課題に対し「ペントハウス(階段室)」を採用する事で建築基準法上は2F建てで成立させ、建物を大きく高く設計しています。
2Fから「ペントハウス(階段室)」を経由してルーフバルコニーへ上がれ、さらにタラップ(はしご)でその上のルーフバルコニーへ上がれる経路も獲得しました。
その高さは建物が建つ地盤面から7mの高さに位置します。
さらに前面道路から建物が建つ地盤面まで4mの高低差があるので、前面道路からルーフバルコニーまでの高低差は11mになり、住宅密集地でありながら固有の眺望を獲得する事に成功している。この高さは5Fの床レベル同等です。
「Greenとプライバシーを両立させた平面計画」
3棟の全体構成は、「内部空間=へや」と「外部空間=にわ」がパズルを組み合わせるようにそれぞれ寄り添い集まり複雑な全体構成を有しています。
それぞれの棟で「にわ」に配置されている「Green」にはより近い距離感でいたい。
しかし「内部空間=へや」のプライバシーは守りたい。
その物理的な矛盾を解決しそれぞれの棟の生活をより豊かなものにするために3棟を同時に設計すると共に「にわ」と「へや」も同時に設計する事でこの物理的な矛盾を解決してそれぞれの棟の豊かな生活を現実に獲得しました。
演出的に窓を配置する事でお隣さんの「Green」が自分の「Green」に映るように配慮する事で実際の敷地面積より広く実際の「にわ」より視覚的に広く感じられる演出を意図的に計画しています。
この演出により「内部空間=へや」を「外部空間のような=へや」。「外部空間=にわ」を「内部空間のような=にわ」のようにキャラクターを固定しない個性的でかつ快適な空間を作り出しました。
「「にわ」をより身近に感じるための基礎形状」
「内部空間=へや」と「外部空間=にわ」の距離感を縮めるための解決手法を提案しました。
一般的な木造住宅では建築が建つ地盤面から1F床までの距離は46cm程です。
これは階段に置き換えると3段程の段数になり距離感を生み連続感や一体感は損なわれます。
これは一般的な木造住宅の床下基礎立上り高さ(h=30cm)が建築基準法で定められている事と主要な構造部である事に起因しています。
本プロジェクトでは建築構造家とコラボレーションして設計初期段階から綿密な設計をする事と同時に専門的な構造解析プログラムで計算する事で基礎の立上り高さを一般的なh=30cmから1/3のh=10cmに縮小する事に成功しています。
これによって一般的な3段程の段数は1段に抑えられ、「内部空間=へや」と「外部空間=にわ」の距離感を縮める事に貢献しています。
また「にわ」をより身近に感じるためにお互いに行き来する箇所に現状の法律で最大寸法の引き違い窓を意図的に配置し、「にわ」をより身近に感じる事ができます。
2018年 GOOD DESIGN AWARD 受賞
高いレベルのルーフバルコニーと低いレベルのルーフバルコニーはタラップ(はしご)で行き来出来ます。周囲の家の屋根から上(空)しか見えない心地よい場所です。タラップ横の四角い窓の内部はリビングの吹き抜けになっています。
分譲住宅の棟と棟の間は意図的に空間が作られていて、そこに緑が植えられています。緑は常緑樹と落葉樹を適宜に植え分ける事によって日本の四季が楽しめるように意図されています。また各棟内部空間のプライバシーを守る役目も果たしています。緑が際立つよう、建物の外壁はあえて白で統一されています。
玄関ドアは特注で作ったスチール製です。床から天井までの高さの高いドアなので高級感があります。玄関横のシンボルツリーはあえてポイントで植えています。地面は土間コンクリートです。
大小の開口部が散りばめられた明るい主寝室です。開口部の外の「にわ」には意図的に緑を植えて内部から視線に入るように考慮されています。右の窓の外はバルコニーです。右のドアの奥はWicになっていて収納能力にも配慮しています。床はパーケットフローリングを採用し、壁天井が白の空間の中でポイントになっています。
大小の窓が適所に散りばめられた吹き抜け大空間のリビングです。右の階段は屋上へ上がる真っ白い階段です。左のオープンキッチンは特注制作し、白ベースのインテリアの中で過度に主張しないようにシンプルにデザインされています。天井は屋根を支える構造材を意図的にデザインに取り入れて露出させ、白ベースのインテリアの中でポイントを作っています。床は主寝室とは異なる木材を使用したパーケットフローリングです。
ダイニングキッチンはミニマルな空間にまとめられています。キッチンのデザインは限界までシンプルにデザインし彫刻のような雰囲気を作り出しています。右の引き戸の奥は浴室、洗面、トイレの水周りがまとめられています。床は600角の大判タイルです。
リビング天井は天井を支える構造材を意図的にデザインに取り入れて露出させ、白ベースのインテリアの中でポイントを作っています。大小の適宜配置された窓からは太陽の動きに合わせて心地よい光を内部に誘います。
特注製作した洗面台です。天板はステンレス(SUS)です。大きな鏡が周囲を反射して部屋を広く見せます。トップライトから心地よい光が内部にそそぎ明るく清潔感のあるパウダールームです。左はトイレ、奥は浴室が配置されています。
1Fの廊下です。日当たりという意味ではこの家でもっとも日当たりのない場所ですが、床と壁に白を多用する事で明るい空間に見せています。天井はリビング天井と同様に2Fの床を支える構造材を露出で見せる事で白ベースの空間のアクセントにしています。奥は玄関ドアです。左の階段で2Fに上がります。
大小の窓が適所に散りばめられた吹き抜け大空間のリビングです。天井は屋根を支える構造材を意図的にデザインに取り入れて露出させ、白ベースのインテリアの中でポイントを作っています。床は主寝室とは異なる木材を使用したパーケットフローリングです。天井の表し天井に仕込まれた間接照明が非日常を作り出します。
デザイン性の高い分譲住宅を探していましたが、なかなか希望に近い良い物件にめぐり合わず時間が経過していました。とある時にこの物件が売り出されていたのを見て「これだ!!」と思い購入に至りました。至る所にバルコニーやルーフバルコニーが配置されていて、自分なりに好きな使い勝手で使える所も気に入っています。なんといっても単純にカッコ良くてデザイン性に優れる所も気に入っていますが、それでいてデザインだけにかたよることもなく収納能力も十分あるので助かります。