施主の住まいに対する要望は、親と子世帯の4人からなる2世帯住宅でしたが、上下に重なって住む従来のスタイルに対しては音やプライバシー等の点で否定的でした。そこで敷地中央の共有アプローチ部を挟むように、狭小ながらも2棟の独立した棟を建て、2階レベルの外部ブリッジで連結した「横につながって住まう」提案をしました。ブリッジには屋根を架け、双方の生活空間の延長線上にあるテラスとしての機能を持たせました。そこは2つの家族の「間合いを調節し交流を喚起する場」であり、この計画のコンセプトの中心として検討されました。また、2棟に分け将来的な家族構成の変化や一部賃貸等にも対応し易くすることで、「中長期的視点での資産価値」も鑑みた計画としています。
分棟とすることで得られる様々な成果
1.
分棟とすることで住人同士の「間合い」を尊重し、生理的に快適な距離を調節することでゆとりある人間関係を長期的に維持します。
2.
棟に分け将来的な家族構成の変化や一部賃貸等にも対応し易くすることで、「中長期的視点での資産価値」も鑑みた計画としています。
3.
通常は容積率いっぱいに建築し、前面道路に対し圧迫感を与えてしまいがちな都市部の住宅事情に対し、分棟が個別の形や素材感、空隙を持つことでボリュームが分節され、既存の街並みのスケールと調和しています。
4.
分棟の中心に生まれた空隙、共有アプローチは、イタリアの路地裏空間のような心地よいヒューマンスケールを持ち、緩やかに都市コミュニティーに繋がっています。
親世帯と子世帯の共有アプローチです。屋根付きの駐車場としても機能します。左が親世帯。右が子世帯です。それぞれの機能門柱も家のデザインに合わせてデザインされています。地面に敷かれたピンコロ石がコンクリートとはまた違った雰囲気を醸し出します。
共有アプローチの門扉を入った所です。左の朱色の引き戸が親世帯の玄関ドア。右の杉板に黒い塗装をした玄関ドアは子世帯です。中央奥が屋根付きの駐車場。
モールテックスという左官材を塗り込んだ特注キッチンです。独特の風合いがあります。壁には横長の白いタイルを貼り、黒い目地材を仕様する事でメリハリをつけています。天井から少し下がった位置に壁の端から端までウォールナット突き板の棚を作りここにしかない個性を作り出しています。床は600角のタイルで機能性に配慮しています。右の引き違い窓の外には小さな庭があります。
黒皮鉄という独特の質感を持ち経年変化する鉄の板で作ったスケルトン階段です。左側のドアはお施主さんが以前の家で使っていたドアをそのままの状態で保存し新居に移設しました。元々は画家の絵だそうです。ドアの奥は書斎になっています。
親世帯は高齢化に伴う将来を見据えた減築(建物を小さく建て替える事)で玄関は小さくまとめられています。床は風合いのあるモルタル仕上げ。シューズボックスはシンプルに見えるように手掛けの類を使用せずに壁に見えるよう配慮しています。スケルトンの鉄骨階段の奥にキッチンが見えます。コンパクトにまとめられたLDKです。
階段から2F天井を見上げています。適所に配置されたトップライトから室内に柔らかく心地よい光を運びます。
2Fのホールです。適所に配置されたトップライトから室内に柔らかく心地よい光を運びます。左側の黒格子の左奥は水周りが配置されています。奥の引き違いドアの向こうは子世帯との共有バルコニーでここの共有バルコニーを通して親世帯と子世帯がやわらかくつながります。
洗面とトイレは1室にまとめられた「2 in 1」スタイルです。洗面台はお施主さんの希望を満たすために特注でデザインされています。白ベースのインテリアデザインの中でウォールナットの棚がインテリアデザインを引き締めます。床はお施主さんの希望のかわいらしいタイル。奥は床壁天井全て白でまとめられ清潔感あふれるバスルームです。
親世帯と子世帯の共有バルコニーです。右が親世帯。左が子世帯です。床は600角のタイル。壁はモルタル下地に吹き付け仕上げです。
空をくり抜いたような正方形の額縁です。左のもの掛けは室内の階段と同じ黒皮鉄で作られた洗濯干しです。