鎌倉の北部谷戸に建つ住まい。南西の庭は背後に山の緑を控えリビングの吹き抜けと対峙する。室内から見る自然もさることながら、朝のジョギング後、外のデッキでコーヒーを飲みながら寛ぐ時間も大切。
長い海外生活、数度にわたる住まい造り、海外で一般的だった分離発注方式による工事、今までの住まい体験の集大成。
繊細な昔ならではの古建具。4枚引き違いを3本片引き、に作り替えて、玄関、ホールの間仕切りとして使用。奥の居間への入り口にも少し太めの格子戸を設え、奥を緩く見せています。床は埼玉県桶川の遠山記念館に触発されて作りこんだ人造石研ぎ出しです。2階ローカの欄間が見え来客の確認可能です。
前の画像で格子戸をあけたところです。
天井のべんがら色に合わせキッチンを選択
太い柱、外部へと広がる屋根下のデッキ、庭との一体感など 穏やかな光が漂います。
階段室の中央には小さな吹き抜けがあり、ここは1階のトイレの採光ダクトになります。
個室にはバルコニーからの豊かな光が入ります。
道路側の外観です。右手にはカーポートが見えています。
2階には夏の日差しを避けるため、骨太の竹で簾を構成します。 その下は奥行きが3メートルを超えるデッキ
現在の家に移住して早丸4年になる。すっかり居住環境にも慣れ、此の家と共に日々シニアライフをエンジョイしている。
30年になる海外での長い生活に区切りを付け日本に戻ったのは5年前、帰国に当たって、私たちは今まで住んだ経験の無い、木造の和モダン住宅の新築を計画した。5軒目の挑戦である。これまで日本及び海外で4軒の家造りを経験したが、いずれも住みやすかったと言えるほどの満足感は得られなかった。何かが足りない。私たちは、それを「癒しの様な感覚」と結論付けた。妻は外国人であるが、幸いにも新築に当たってのコンセプトと基本は私と共有しており、かなり欲張ったものであった。つまり、和風建築ではあるが、間取りは出来るだけオープンでゆったりとする(特にキッチン、リビング)、それに天井は高く、窓は大きく、それにデッキは広くという、和風建築のイメージとはかなり異なるものを両立させること。最大の問題は、私たちの要求を実現する設計をどこにお願いするか。色々住宅関連図書、インターネットなどで調べたが、これぞという会社が見つからず困っている時、ある日、日本にいる息子から、偶然ネットで見つけた「鎌倉設計工房」という設計事務所が面白そうなので一度当たってみたらという連絡を受け、急遽日本に一時帰国した。そして私たちは、鎌倉設計工房の藤本社長さんとの何回かの面談し、頂いたご提案と建築実績、現場訪問を通じ同社にお願いすることにした。
実際、4年住んでみて、強調したい点は、全体設計の良さからくる「住み心地の良さ」、「快適さ」、そして今に至るまで「飽きを感じ無い」感覚など同社の仕事には満足している。細かくなるが、特に気に入っている点としては、藤本社長さんのこだわりの一つでもあるベンガラ、深みのあるベンガラ塗装を多用し、また庇を長めにすることで建物に陰影を持たせたこと。それと漆喰の白壁とを対比させ、これにより私たちの求める「静寂さ」と「癒し」を創り出すことができた点。更にもう一つ、同社が推奨する、日本のアンチークな時代家具、建具の利用ということである。玄関扉に「蔵戸」を、和室には「書院」、欄間、格子戸などなど各部屋で「和の遊び」が強調できた。ただ時代建具は、全般的に寸法が小さく、まちまちで取り纏めの鎌倉設計工房さん、建具屋さん泣かせとなった。
毎朝、庭を眺めながら広いデッキで家内と飲むコーヒーの味は格別である。