この商店街は、大正時代に形成されたと想定され、第二次世界大戦の空襲の難を逃れ、今日に至る東西1㎞にわたる通りを挟んで立ち並んでいます。当時の町家を彷彿とさせる町家改修の店舗が多くある商店街です。ここの4軒長屋の西の一角を、喫茶店として再生を試みました。西側には道路法上の道路ではない通路があり、既存の建物は改変に次ぐ改変で、原型を留めていませんでした。隣と柱一本で共有された構造で、構造改修には難航を極めました。結局残った部材は、数本のゴロンボだけという結果になりました。
特に、梁が損傷していることと、継ぎ足し補強をされていた為に、全面的に見直しをかけ、現場合わせによる架構となりました。 昭和の戦前にはよく使われ今日では忘れ去られた感のある「人造石砥ぎ出し」を復活させました。外部の漆喰での鎧壁は、多くの手間がかかりますが、新鮮な風合いを出してくれました。
大正レトロを彷彿とさせる戸夢窓屋さんのステンドグラスの起用と、建具の枠にベンガラ塗りを施すことによって、古くて新しい町家再生が強く強調されました。
2階の和室の客室は、中塗りの土壁と相俟って落ち着いた和の空間として、平成の時代での提案となりました。奥庭は僅かなスペースですが、この店舗にはなくてはならないスペースとして機能すると思います。
一階喫茶室。狭い空間を有効に使っています。 窓はステンドグラスが嵌め込まれ、建具はワビスケを塗りました。
奥にある坪庭が、この空間の奥行き感を出しています。
玄関の扉はペアガラスの格子の引戸です。 外部から見えるようで見えない構造にしています。
ペアガラスのステンドグラスで、大正レトロ感を出しています。
漆喰の下見板張りに、嵌め殺しの、この店オリジナルのステンドグラスをはめ込みました。
階段はタモの無垢材を用いました。
天井は、スギ板にワビスケを塗りました。 ゴロンボは、オリジナルなものと足したものとの混合です。
階段の踊り場には、トップライトを仕込みました。
杉皮と竹を左右に貼って、和風の庭に仕立てました。
路地側の壁は、竹の塀を見せています。