坂道を登っていくと、四角い穴の開いた四角い建物が現れる。
敷地は姫路市の住宅地。山裾に位置する高台であり、市内から住宅地へと向かう登り坂が折れ曲がるコーナー部分に位置する。敷地からは姫路市が一望できる。
この敷地で建築主が希望したことは、まずなによりも南西の方角に広がる山裾の眺望だった。一方で、卓球ができるスペースが欲しい、という要望もあった。比較的大きなスペースが必要となる。この2つを如何に調停しながら豊かな空間を作るかが課題となった。
これに対して、眺望を望む南西の方角にあえてフロアレベルをずらした大きな開口部を設けた。内部空間にも様々なフロアレベルを設け、この開口部を通じて様々な景色の見え方が存在する多様な空間を構成した。また、1階の大きな土間や開口部に設けた外部デッキ、その下の中庭など明確な目的を設けない余白としての空間を挿入し、空間の境界線を曖昧にすることでより多様性を喚起できる仕掛けとした。
大開口から1階の各部屋には、柔らかい光が差し込む。中庭には外部デッキの木格子から木漏れ日が差し込む。2階奥のダイニング・キッチンからは、四角い窓に切り取られた景色が楽しめる。リビングではゆったりとした雰囲気で、広がりのある景色を堪能できる。
大きな開口部を中心に段差と余白によって多様な外部との関係性を楽しめる空間となっている。