クライアントは、新居を建てるにあたって土地を探しはじめた頃、私たちの事務所に来られました。
当初は土地を探すエリアも大まかでしたが、私たちと話合いを重ねながら、山々に囲まれ、新しく開発された分譲地に決まりました。まだ鹿が道を歩いていることがある環境です。
そこは平屋でも十分建てられる広さで、家から見上げると山が見えるだろうと想像できる立地でした。
その敷地に、コンクリートの塀を迷路のようにめぐらし、その迷路のある範囲に屋根を被せると、そこは内部空間となるという方針のもと計画を進めました。
目隠したいという要件で出来上がるであろう塀は、家の外部にあっても内部にあっても、要件は同じであるのですが、外は雨が降る、風が吹く。内部は雨風を防いでいる屋根、外壁がある。
内部に塀が入り込むと、それは塀と呼ばれないかもしれない、それはたぶん間仕切りという名前に変更させられるが、塀が入り込むという視覚的な印象により外部と内部の境界を紛らそうと考えました。
内部の様子は、コンクリートの塀の迷路の中に入ったような雰囲気をイメージしました。動線としては庭に面するLDから介して各々の小さい空間へ導かれます。
寝室、子供部屋、仕事部屋等々の小さい部屋は、コンクリートの塀などで仕切られながらも背の高さ程度より上部は透明ガラスで仕切り、梁の繋がる天井が個室同士を視線的に繋げ、閉塞感を感じさせず、個室は全体の一部という感覚を作っています。