― 家形の構えを四方に向けて立体的な抜けを実現したゲストハウス ―
小高い丘の上に建ち、周囲を望むそれは、まるでヴィラのような佇まいをもつ。大きな敷地の一部に建つ老朽化したガレージ兼蔵であった住宅の離れを、ゲストハウスとしての機能を付加したかたちで建て替える計画であった。
敷地は、北に前面道路、東に母屋、南に大きく開けた庭、西に森と、どの方角に対しても正面を向けてもいいような恵まれた環境に囲まれていることから、家形の蔵構えを四方に向けた、妻、平の区別のない立面をもつ建築としている。この4つの家形の立面をせり上げ、方形屋根が変形したような屋根形状とすることで、全体を統合することを考えた。
こうして形成された外形に対し、アプローチを母屋からの方向に正対させ、かつ施主が大事にしている木を囲うように「く」の字に歪ませる操作、また、見晴らし用のテラス・庭いじりの際の東屋的な場所・アプローチの軒下空間をつくり出すために、ボリュームを欠き取る操作を加えている。
丘の上に建つ建築として象徴的な強さをもちつつも、環境の中に溶け込むような佇まいをもつ建築を目指した。
外装はガルバリウムを横葺きとして水切りのように捉え、かつ長尺の板材を使用して各立面で端から端までを1枚の板で形成してジョイントが生じないようにすることで、水路が外壁を伝う際に汚れで美観を損なわないように考慮している。
周囲の良好な環境を室内に取り込むように、1階は東西方向、2階は南北方向に抜けをつくることを意図した。空間の方向性を直交させながら積み上げることで、四方への抜けを立体的に実現させている。 こうした抜けをつくる考えに従い、1階の壁、2階の壁、また屋根架構の大梁を井桁状に積み上げた構造としている。