敷地はトラックなどが行き交う大通りの交差点付近にあり、騒音や振動の激しい環境でした。ですが、せっかく親族から譲り受けた敷地ということもあって、クライアントのご夫婦とそのお子様2人の家を建てたいというご要望でした。
敷地の周囲は背の高い商業施設も多く、どうしても外部に対して閉じた空間にならざるをえませんでした。そこで、そういった閉じた空間でありながらも何かしら奥行き感を感じられる空間を提案することを目指しました。これに対して、空からの光を用いて抑揚のある内部空間を形作ることを検討しました。
壁を用いて光を誘導し、壁周辺に動きのある光を落とすことで、壁をただ空間を分節する境界ではなく、壁とその周辺が緩やかに変化する領域となるようにしました。壁の周囲に余地のあるスペースを設けることで壁とその周辺はより領域として雰囲気を
まとい、光の動きに合わせてゆっくりと領域が変化することで空間全体が緩やかにうごめくイメージを提案しました。
道路側には非居室を配置することで道路側からの騒音の緩衝帯としました。また、サンルームや坪庭など明り取りの緩衝帯を介して外部空間を取り入れることで、居室と外部空間との距離感を調整しています。これによって外部に対して閉じながらも、外部環境を静謐な光として室内に還元し、緩やかにうごめく奥行感のある空間を実現しました。