「天蓋のある家」 (呼吸する家Ⅹ)
湘南にある敷地は風致地区に指定された穏やかな住宅地である。コンパクトな2階建てのボリュームを敷地に対しおおらかに配置し、道路側は駐車スペースと植栽された前庭を開放的に扱っている。片流れ屋根に沿って仕上げたひと続きのベイマツ小幅板の格子が天蓋のように建物を覆っている。建物の南方向にある隣地の借景に向かってつくられた2階ベランダが建物の表情を特徴づける。2階主室はオープンキッチンを中心に居間、食堂、階段を含む1室空間である。片流れの格子天井は場所ごとに天井の高さに変化を与える。居間のベランダ側は木製ガラス戸、網戸、障子が引き込まれる大開口で、半屋外のベランダと連続する。上部のガラス欄間を通して天井の格子がベランダまで連続する。食堂コーナーは朝日の入る高窓と通りを覗く小さな木製窓がある、天井の一番高い場所となっている。1階玄関から左官仕上げの壁が階段に沿って2階天井まで立ち上がる。階段の西側の窓と天窓の光が刻一刻その壁の表情を変えていく。開閉可能な天窓は空気の流れもつくりだす。天井の高さと開口部の自然光の取り入れ方の違いが、それぞれの場所に変化を与える。1階玄関にはポーチから連続して大谷石を敷きつめる。土間は自転車置場を兼ね、ゆったりとしたスペースをとっている。その上に2階への階段をスチールの吊構造でオーバーハングさせている。寝室とクローゼットは将来の家族構成の変化に対応できるフレキシブルな構成となっている。
外観ファサード 外観夕景。 照明を受けた天蓋が内外一体となる薄暮のひと時。
2階LDK ベランダ開口部の障子を閉めた状態。
2階LDK ベランダから階段方向を見る。
玄関見返し。 2階への階段は鉄製ロッドで吊られている。
スチール丸柱、腰壁とスチール製手摺、木製ベンチのあるベランダはウッドデッキ仕上げ。