小さい園児たちを包むような大屋根、天然木を主とした内装、公園に面した南側に開いた開口部により
「大きな屋根で包まれた家のような保育園」
を目指しました。
大きな一つの勾配屋根により建物全体を覆う構成とし、小さな園児を大きく包みこんでいます。 茶色の外壁・屋根で構成された隣接する既存園舎や緑豊かな山々に囲まれた環境に溶け込む色彩として、紅葉時期の黄葉を参考に優しく明るい印象をもつ黄色の外壁にグレーの屋根と庇で外周を覆っています。 既存園舎とは大きく色が異なりますが、明度を揃えること、自然界にある色味を採用することで、違和感なく一体的な景観を形成しています。
内装に原色系の色彩を使ったカラフルな保育園も多いですが、カラフルな園児たちや持ち物・備品で満たされることをイメージし、全体として ・明るいカバのフローリング床 ・天然木による腰壁・建具+白い壁 ・白い天井 として、シンプルな内装としています。
落ち着きのある空間とするためには、ある程度の囲われ感が必要となる。 一方、保育士同士のコミュニケーションや園内の状況の確認のためには見通しも必要となる。 この相反する二つの条件を満たすために壁・建具は腰壁部高さまでは見通しのきかない壁・フラッシュとし、上部を強化ガラスとしています。 園児にとっては見通しが利きませんが、目線の高い大人は見通しがきくことで保育がし易くなっています。
計画地は広島市郊外、新しく開発された新興住宅地の中にあり、共働きが当たり前の若い世代が次々と集まってきています。 現状、保育園は不足しており行政庁も保育園建設を促す状況となっていますが、ひと通り開発が終了し家々が建ち並び月日が経つと、そこにはもう保育園が必要ではない同世代の人々だらけとなってしまうかもしれません。 広島市近郊でも既にそんな状況の地区もある中で、本増築棟が保育園であり続ける必要があるかと考えた時、他の用途にも転用できる建物として計画することを提案しています。