お気に入りの絵画で彩る、美術館のような家:
「美術館のような住宅を建てたい。」という、絵を描く事とレコード鑑賞が趣味の建築主のための住宅です。(この他にも、料理やピアノ演奏もご趣味にお持ちです。)
それぞれの空間に飾られた所蔵作品を見て行くと、まるで美術館の展示室のように住宅を一筆書きで巡ることができます。また、アトリエだけでなく、庭でも絵を描きたいというクライアントの要望に沿って、アトリエから直接外に出られるような位置に中庭(南庭)を設けました。外部からの視線を遮りたいという要望を満たしながら、風や光が抜け、シークエンス(連続的な部屋のつながり)と重層性のある空間構成になっています。
日本建築学会から「採光・通風に優れ居心地が良い住宅。文字どおり美術館の中にいるような印象を創出する瀟洒な優作である」という高い評価を受けた住宅です。 大小さまざまな大きさの白い箱を、5つ組み合わせることで全体ができています。全ての空間がひと繋がりになるような、シームレスな空間構成を目指しました。 また、積雪への考慮から、風の影響によって雪が積もりにくいとされている、パラペット(防水押さえの立ち上がり)の無い平らな屋根を採用しています。 イタリア「 A' Design Award 2015-2016」建築部門金賞受賞、「ふくい建築賞2016」住宅部門優秀賞受賞、日本建築学会「作品選集2017」選定作品。
天井の高さは、100号の絵を飾ることのできる壁の大きさをふまえて決定しました。 壁の下地および仕上げは、季節によって飾る絵を容易に模様替えできるように、美術館の展示壁と同じ仕様にしています。 また、絵画鑑賞だけでなく、ジャズを中心とした古いレコードも数多く持っていらっしゃるため、レコード・ジャケットが美しく見えるような飾り方も検討すべき大事な点でした。
リビングからキッチン方向を見る: 冬季は太陽光による日射熱が床のタイルに蓄熱され、じわじわと室内を暖めます。 これにより、高い断熱性能と相まって、省エネルギー効果を高めています。
1.料理好きの施主の要望による、すっきりとした形のアイランド型キッチン。隣に見えるカウンターは多目的な朝食・読書コーナー。 2.食器にもこだわって、きちんと収納されています。 3.洗面脱衣室から見るリビング・ダイニング。全ての部屋がシームレスに繋がっています。 4.ダイニングより、リビングおよび洗面脱衣室方向を見返す。ピアノやレコード棚、壁に掛けられた絵画が見えます。 5.オーディオ収納用に設計した家具。レコード・プレーヤー、アンプ、CD用デッキ等が納められています。
伝統的な京都の町家は、暖まり易い庭(奥庭)と冷たい庭(坪庭)というふたつの庭を設けることで、室内に風の流れをつくり出しています。 これに倣って暖まり易い南庭(中庭)と暖まりにくい北庭というふたつの庭をつくりました。中間期には、風が北庭から入り、ひとつながりになったリビング、キッチン、エントランス・ギャラリーを通って最後にアトリエから南庭へと吹き抜けて行くことで、空調の熱負荷を軽減しています。
玄関の扉を開けると、中庭(南庭)を通してリビングが見え、内部に入ったつもりが外に出たかのような感覚を覚えます。 絵画の配置に関しては、これまでに描きためられた絵画や飾りたいという絵が多数あり、まずは、すべての絵の大きさを実測することから始めました。その後、それぞれの絵をどこに飾るかという絵画の配置を含めてプランニングの打ち合わせを何度も行いました。
浴槽を半分埋め込んでいるため、中庭の地面と同じ目線の高さでお風呂に浸かることができます。 中庭を挟んで向かい側にアトリエが見えています。
この住宅の中では唯一黒っぽい部屋です。 もともとお持ちだった黒いシャンデリアを飾るのにふさわしい場所となるようにデザインしました。
周辺の街のスケールに合わせて建築全体を小さく分節化し、高さも低く抑えています。
5つの白い箱を組み合わせた全体の構成が浮かび上がっています。
希望通りの、いや期待を上回る120%満足のいく住宅になって、とても喜んでいます。