神奈川県葉山町、閑静な住宅地に建つ新築の戸建住宅です。
葉山を新たな住まいに定めたクライアントご夫妻は、この地の空気感に合う、おおらかな暮らしのイメージとして吹抜けのある住空間を希望されました。
建築は、南北に扁平な敷地に沿うやや細長い木造2階建てのヴォリュームとし、延べ面積30坪程度のシンプルなプランでありながら、光や風、視線の伸びやかさを感じられるような内部空間の実現を目指しました。
1階に家族のつながりが感じられるLDKからなる一体の空間、上階に個室を配置し、そこへ空間の広がりを獲得するようテラスを各階に加えた構成としています。
<外部を取り込む2つのテラス>
各階に設けた2つのテラスは、内部空間に対しそれぞれ異なるかたちで外部への広がりを見せます。
1階リビング南のテラスは、内部床が外部へ引き出されたようなスペースです。建築の操作としては、2層吹抜けの袖壁を外部へ伸ばしつつ、南端(前面道路側)にアイストップとなるコンクリート壁を立てることで適度に視線を遮り、外リビングのような領域としました。
2階のテラスは、南北に細長い屋根・壁のあるトンネル状のテラス空間を建築内部に引込むように設けています。室内からは、この空間は外部でありながら屋内のようにも視認され、隣接する空間に奥行きを与えます。屋内のような居心地を感じられるこの半外部空間では、ハンモックでくつろぐなど葉山町の光や風を日々の暮らしの中で楽しむ場所となります。
<階段を巡る動線が家族の居場所>
1階内部は、エントランスから、ダイニングキッチン、吹抜けのあるリビング空間を南北に連続させ、外部テラス奥の壁まで奥行き約12mの伸びやかな一体空間としました。空間軸に沿う行き止まりのない廻れる動線をもつ機能的なプランとしています。
またこの空間の中央部、吹抜けに設けた階段は、リビング空間を天井高さの異なる大小2つのスペースに緩やかに分節する要素となっています。このうちキッチン脇に連続するコンパクトなスペースを子どもリビングと位置づけ、1段目の階段をベンチのように扱える設えとしました。さらにこの階段を巡る動線に沿って置かれたL型のソファにより、大小のリビングスペース、ダイニング、キッチン、テラスなど、1階のどのスペースにも向き合うことが可能となります。
家族やゲストがそれぞれに居心地の良い場所を見つけ、違った過ごし方をしていても、お互い安心して居られるような、そんな住まいを「葉山の住宅」では考えました。