<竹林を受け継ぐ住まい>
愛知県新城市、伊那街道から少し奥まった敷地に建つ住宅の建替え計画です。
計画地には、既存住宅に隠れひっそりと広がる美しい竹林があり、この地を特徴付ける特別な存在であると感じました。しっかりと手入れされたこちらの竹は、460年の歴史を受け継ぐ「豊橋祗園祭り」で奉納される手筒花火の製作にも提供されており、住宅の建替えと共に竹林も建主さんの代へと受け継がれて行きます。
建築は、前面道路となる街道筋から奥の竹林まで見通せる土地の連続性・つながりを意識した構成とし、1階を鉄筋コンクリート(RC)造として足元に竹林への抜けとなるピロティを与え、通りからの視線を敷地の奥へと誘ないます。さらに1階の中央部に、土間から直接出入りできる多目的室を設け、家族や地域の人々が寄合い、関わりを深める「集いの場」としての役割を持たせています。
2階は木造とし、居住部分のほとんどを東西に伸びやかなヴォリュームの中に配置することで平家のような暮らしを実現しています。各室の窓からは季節や時間により表情を変える竹林を日々目にし、また東側の深いバルコニーからは山並みや田園風景を望むことができます。こうした竹林や山並みといった自然の要素は、ここに暮らす人の意識を外へと拡げ、建築の内と外を一体化させてくれます。
外装にはコンクリートの打放し仕上げ、光沢を抑えたガルバリウム鋼板の無機質な素材、グレー系の色調を用い、周辺の木造家屋や隣接するお寺の瓦屋根などと景観の調和を図ります。一方建築の内装は、壁・天井にしっくい塗り、床・建具・造作家具を木質系の自然素材で穏やかにまとめ、造形的には抑制をかけたシンプルな表現としました。
周囲の景観との親和性、程よい落ち着きと開放感、この土地がもたらす「ゆっくりと流れる時間」を感じられる建築を目指しました。