約40年前に山の地形を活かして区画整理が行われた閑静な住宅街での新築計画。
建築協定等により30cm以上の切土及び盛土を禁止する地域であった為、道路面から敷地奥まで約6mの高低差を活かした計画が法令上求められる中、
クライアントからはプライバシーが守られた、日常生活を忘れられる空間をご要望された。
敷地の計画高さを道路及び駐車場のレベル、1階LDKのメインフロアレベル、スキップフロアによる1.5階のサブフロアレベルという3段階に分けて、
高低差を活かし、プライバシーを確保できるように計画した。この地域全体が緑豊かな街並みのため、散歩を楽しむ人などからの視線に配慮し、
LDKのメインフロアまで約2.5mの高低差を計画する事で、LDKの大開口から道路面や歩行者、自動車等が見えず、
四季を彩る森林の借景のみを切り取るように計画。ワンフロアとなるLDKは、階段の存在によりリビング空間とダイニングキッチン空間を緩やかに区切り、
それぞれに居場所をつくる計画とした。高低差のある南側ではなく東側に庭の要素を持たせた屋外テラスをつくり、
メインフロアと床レベルを合わせながら壁面緑化をする事で、隣地からの視線を遮断し、室内と屋外を曖昧に繋げた。
LDKと1.5階部分は構造上1階となる為、1.5階を基準に梁高をあわせた木造軸組工法とすることで、LDKの天井高を3.8mまで上げて大空間としている。
2階から1.5階に下り、そこからメインフロアに下りる階段は各居室のプライベート空間から人が集まるパブリック空間へのアプローチになる為、
ここを気持ちの切り替えをする「境界線」として位置付け、視覚的にくぐるイメージを与える為にゲート状のデザインにしながら塗り壁でテクスチャーを付けて強調させた。
敷地の高低差を活かした四季を楽しむ借景とプライバシーの守られた空間により日常を忘れさせる別荘地のような非日常空間を住宅街で実現させた。