郊外に建つ2世帯住宅。南北に約38mという長い敷地で、南側が地域住民のコミュニティーグランドになっている。クライアントからの要望は自然体でいられる暮らし。そこで、周囲からの視線を遮りプライバシーが確保された空間、自然とのつながりから安らぎを得られる空間、そして住まい手の好みを表現できる空間を形成することで住まい手の最も自然体でいられる暮らしを提案した。
プライバシーの確保された空間をつくる為、南側は地表面まで落とした屋根と壁面でコミュニティーグランドからの視線を遮り、プライバシー性の高い土間空間と中庭を形成している。壁面下部を抜くことで風を通し、土間、中庭、そして室内へと風の流れを作り、意匠面と環境面からデザインしたファサードとしている。視線を遮ったことにより生まれたプライベート空間である中庭をLDK等の居室で囲うような計画とし、ウッドデッキを設けることで屋内と屋外との境界線を曖昧にし、外部環境を室内に取り込んだ自然を感じることのできる計画としている。
屋内はインテリア、家具好きのクライアントが好みの北欧家具が楽しめるよう、空間を構成する要素のスケール感を操作している。
約46帖のLDKと畳空間にキッチンや階段などの空間を構成している要素を、あえてスケールアウトさせることで、大きな空間にそれぞれの居場所をつくるように線引きをした。緩やかに空間を細分化させることで、家具の配置を安易にし、家具同士の重なり合いを軽減させ家具自体が持つ意匠を効果的に発揮できる空間とした。壁や天井はホワイト系で統一させ色味を抑えることで、家具や雑貨が映えるインテリアデザインとしている。スケールアウトさせたキッチンや階段は大きく設定した分、キッチン横のワークスペースや腰を掛けくつろぐことのできる階段など、居場所としてデザインすることで家族のコミュニケーションスペースを増やした。LDKと中庭をつなぐ開口部は大きく設定し、外部とのつながりを高めている。開口部のカーテンには透過性の高いレースのものを採用。室内へ柔らかな光を取り入れると共に、風によるカーテンのゆらめきをデザインし、空間に動きを与えている。中庭から少し距離があり外部からの光が届きにくいと想定されたキッチンは上部に吹抜を設定し、北側からの安定した光を確保した。また、中庭から入り込んできた風の抜け道としての役割を持たせている。
敷地の奥行きを利用し、8寸勾配の三角屋根と南側壁面で建物フォルムを利用した意匠面と視線を遮りながら通風を確保するなどの環境面の2方向からのアプローチしたデザインと、空間要素のスケールを操作することで家具を魅せることに重点を置いたインテリアデザインによって自然環境とインテリアを楽しめる住宅を計画した。