この住まいは50代後半のお一人くらしの建築主のための建坪18.6坪の小さな平屋の住まいです。ヤマボウシの木が植えられた中庭を囲むように、玄関・ダイニング・寝室を配置しています。春夏秋冬の季節の移り変わり、雨や雪といった自然現象を、毎日の暮らしの身近かで感じながら楽しく暮らして欲しい……そんな思いがこの計画の基本になっています。昔の人の知恵を生かして、引き戸や欄間、小窓、地窓、引き込み障子などを多用して自然の通風を確保し、できるだけ機械設備に頼る比率を少なくするような工夫もしています。
デッキを張った中庭。ヤマボウシを植えて、四季折々の風情を楽しめる空間になっています。
和室:ダイニングと続き間になっている和室。障子を閉めて落ち着いた和室として使うこともできます。
台所:ベニ松で作り付けにした流し台と食器棚。入れる食器などに合わせて引き出しや収納のサイズを決めています。
こちらもベニ松で作り付けにした洗面。下はオープンにして、椅子に座ってつかうこともできる。ドラム式洗濯乾燥機もビルトインして、上部をカウンターにしています。
外観:玉石のある珪藻土仕上げの塀は以前あったブロック塀を低くカットしたものです。町に対して閉鎖的にならないようにしています。外壁の一部はカナダ杉張り。
「我が家も完成から16年が経過しました。毎年、我が家の小さな中庭にも季節ごとに色々なお客様がやってきます。 蝶、とんぼ、蝉や小鳥は常連です。今年は蜂が巣を作り始めて冷や汗をかきました。
またある朝、中庭からトーン・トーンと軽快な音が聞こえてきます。首をかしげながらそっと障子を開けてのぞいて見ると、ナンと猫ちゃんが塀をよじ登ろうと頑張っているではありませんか!どうなることかと事態を見守っていると塀は無理と諦めたらしく、今度はやまぼうしの木に登り始めました。そして枝を伝って無事屋根に飛び移ることが出来ました。ほっと胸をなでおろした朝でした。
それから数ヵ月後、妹と一緒に帰宅してみると別の猫ちゃんがやまぼうしの根元に潜んでいるのを見つけました。 呼んでも怖がって出てきません。 妹が時間をかけて手なずけてやっと抱き上げることが出来て無事玄関から逃がしてあげました。きっと好奇心の強い猫ちゃんたちが散歩の途中に我が家の中庭を見つけ興味を持って降りてきたのでしょう。
我が家は動物たちにとってもやさしい家なのだなあとほんわか暖かーい気持ちになったできごとでした。」