谷戸の奥に取り残された平地は南に木々が迫りけっして日当たりは良くなかったが、源氏山方面の山が見通せる眺望の良い敷地だった。
この眺めを得る主室を2階に持ち上げ、バルコニー越しにその開放的な眺めを満喫できるようにした。地盤レベルは道路から2mほど高く造成されているため、隣の2階建て住宅の屋根越しに視界が抜ける高さ関係にある。
敷地は擁壁、アクセス階段、駐車スペースに取られ、さらに風致地区のセットバックもあり建物が建つ場所は限られていた。変形の敷地に合わせ、台形(室内)と三角形(半戸外)を合わせた直角が2つある四角形がフットプリントとなる。
屋根は角度のある山側の1辺を水下とした片流れで、部屋の方向とねじれた関係となり、室内に変わった動きが生まれる。そして、屋根の水上部分となる子供室上部をオープンなロフトとした。
周囲の緑に溶け込み、耐久性、不燃性を期待し、独特な光沢と質感にほれ込んで焼杉板の外壁とする。玄関、バルコニーまわりの人の手が触れそうな部分は、アイボリー色のリシン吹付け仕上げとした。
擁壁の上に建つ黒い住宅は羽を休めて獲物を狙う鵜の姿にも見え、町を見下ろす城(楼閣)のようでもある。
設計をお願いしました。住み始めて10数年になります。
設計をお願いした際に、私たち夫婦の要望と平林さんの素晴らしい設計センスがうまく反映・調和され大変ありがたく思っております。周りの自然に溶け込むデザインが最高です。