―回遊&スキップフロアの3階建て― 都心の私鉄駅近くの人通りの多いエリアに建つ住宅です。外部の目線を遮ることが必要だった一方、内部での開放感を大事にしています。
家の真ん中に3階まで至る階段を設け、2階のLDKとは仕切りを設けていません。さらには3階の2つの子供部屋がリビングの吹抜に面しており、子供部屋の室内窓の引き戸を開ければリビングと一体化、子供部屋どうしもつながる仕組みとなっています。家全体の空間のつながりから開放感が得られます。とくに2階の仕切りのないLDKでは、スキップフロアをつくることで、空間はつながりながらも場所ごとの変化と落ち着き感も生まれました。
1階~3階のすべての階で、階段周りに回遊動線をつくり、移動のしやすさと遊び心を添えています。
お施主様からは大きく3つの要望がありました。「①最優先事項として吹き抜けのある広々としたリビングダイニング、」「②全体の開放感のためスキップフロアであること」「③冬場が寒くないこと」
設計者側からは、周囲の環境から「④防犯性を高め、外部からの目線を遮ること」も必要だと判断しました。つまり外部に対して閉じたいわけですが、これがお施主様の希望する「開放性」と相反すること、風致地区内にあるため、防犯上の塀ではなく生垣を求められることが悩ましい点でした。
内部での開放性は、間仕切り壁を最低限にして空間どうしをつなげることに加え、行き止まりのない回遊動線をつくって、そのつながりを体感できるようにしています。
また、道路を行き来する人から内部の様子が分からないように、玄関ポーチを壁で囲う、外部の人の目線の高さには窓を設けない、バルコニーの手摺壁を高くする等の工夫を積み重ねたうえで、窓は大きく開けて、内部での開放感に寄与させています。
吹抜と大開口のあるLDKでは、開口の上の大きな庇や、内部で空気を循環させる仕組みをつくって、温熱環境を良好に保つ工夫をしています。
2階では中心の階段の周りに、キッチン、ダイニング、リビング、セカンドリビングがあり、ぐるっとひと回りすることができます。吹抜やスキップフロアで空間に変化を付ける一方、仕切り無しで空間がつながるので、家族はそれぞれの場所で、お互いの気配を感じながら過ごすことができます。
空間をなんとなく仕切っている階段やソファ背面の飾り棚は、LDK全体のつながりを感じられるようにオープンなつくりになっています。
リビング(右側)とセカンドリビング(左側)です。「広いリビングを」というお施主様の希望に対し、ただ広いだけはなく、プラスαの用途で使えるセカンドリビングを提案しました。空間はつながっていますが、吹抜やスキップフロアでなんとなくエリア分け分けされることで、寛ぎ、プレイルーム、在宅ワークなど、同時に多目的に使える部屋になりました。
冷蔵庫や家電は家事楽を意識した配置ですが、壁や引戸で隠れるようにして、空間がすっきりと見せるように工夫しています。
リビングの吹抜を見上げると、子供部屋の室内窓が見えます。窓の引き戸を開けると、リビングと子供部屋がつながります。
自然光の降り注ぐ階段をいわば街路のようなもの。階段を巡っていく際に立ち現れる集成材のパネルや箱によって、スキップフロアの景色が楽しく見え隠れすることを意図しました。
3階の2つの子供部屋は、リビングの吹抜に面した窓を開けると、子供部屋どうしがつながり、お互いの気配を感じることができます。
玄関脇には客間となる小上がりの和室があります。玄関からはちょうどベンチの高さ。お客さんに腰かけてもらったり、気軽にあがってもらったりと「お出迎えのしつらえ」のある玄関にしました。
家族が帰ってきた時に安らぎを覚えるような灯りを考えました。屋根付き大きな玄関ポーチが光たまりとなって、よろい窓から漏れる様子がこの家のアイデンティティとなっています。
家を建てるにあたり様々なハウスメーカーを巡りましたがいずれも納得がいく設計の提案を頂けず1年ほど過ぎたころです。
土地探しを東京都下から世田谷区に絞った際に、近くに設計事務所があることを知り相談に乗って頂いたことがきっかけです。
素人の我々では予測のできない地盤の相談、予算から考えられる土地と建物のコストバランスの相談から乗って頂き、我々の要望するイメージを丁寧にヒアリング頂きました。
我々が要望したことは大きく3つです。①最優先事項として吹き抜けのある広々としたリビングダイニング、②全体の開放感のためスキップフロアであること、③冬場が寒くないこと。
いずれについても満足いく設計にして頂きました。
住むようになり1年弱経ちますが、冬場は吹き抜けやスキップフロアにより寒いことは全くなく2階リビングの床暖房のみで過ごすことができます。おかげで冬場はエアコンによる空気乾燥もなく快適でした。
子供たちも回遊式にして頂いた設計により室内で追いかけっこやかくれんぼを楽しんでいます。
我々の要望するニーズの具現化のみならず、機能性やデザインも諦めることなく最後まで付き合って頂きました。