切妻六.五間堂
-黒と白の凛とした佇まい-
遠景に自然豊かな山並みを望み、そして比較的ゆったりとして閑静な住宅地に位置する敷地に計画された住宅です。
平家を意識したこの家の屋根のかたちは、住宅の外観にとって大きな要素であり、プランとも深く関わりがあります。以前から切妻屋根は、そのシンプルな形状を生かすには屋根のラインをなるべく長く一直線に見せるのが一番美しいと考えていました。シンプルな架構をなるべく長く連続することで生まれるリズムこそが、切妻の美しさではないかと思っています。
このプロジェクトもなるべく一つの屋根で、しかも大きな屋根で家族を包み込むようなそんな切妻屋根でありたいと願いました。そのためにはプランもなるべくシンプルでなくてはならず、南側に幅六.五間のリビング・ダイニング、そしてキッチンをワンルームとしたプランとしました。その空間の上部は、すべて吹き抜けのように屋根までの高さとし、軸組の化粧梁や柱が表しとなった「和」のイメージを持つ大きな空間になっています。
壁は、しっくい塗りの白を基調とし、柱、梁、垂木などは黒く塗っています。床は、深い茶色のきれいなウォールナット材のヘリンボーン(魚の背骨のような形)のフローリングで、独特な表情を創りだしています。造り付けの家具はブラックウォールナットとヤマザクラの無垢材を使用しており、しっかりとした素材感、そしてシックで上質な和モダンの雰囲気を創りだしています。
南に面した大きな四枚のはき出しテラス窓からは、将来森のように緑豊かになるであろう庭を望むことができます。まさに普段の生活の中に自然が取り込まれるかたちです。
このプロジェクトは、和のテイストと、奥様が実際現地を訪れてとても印象に残っている「アンネの緑の切妻屋根の家」の切妻屋根、そして森のような庭というのがご希望でした。
住まい手のへの提案は、
立地の周辺環境からも切妻屋根がベストアンサーだと確信しました。
なるべく東西に長い建物にして、屋根の水平線を強調できれば、凛とした佇まいをつくりだせる。
ちょうど京都の三十三間堂のように、水平線の長い屋根は、シンプルだけど存在感が出る。
そしてそのラインは低い方がより美しい…
シンプルな切妻屋根、黒い羽目板と白の塗り壁は、周辺の環境との調和を求めたデザインとなっています。
東西に長いオープンなプラン、LDKのどこからでも南に配した庭と繋がる連窓のテラス窓の配置。
そして、ワンルームに各部屋が線的につながるシンプルなプラン。
また、四季折々に変化する豊かな自然に寄り添いながら暮らせる豊かさは、
こどもを大らかに育てるのでは。
そして、内でも外でも自由に遊び、学び、安心して暮らせる普段着の家。
ここには、そんな豊かな暮らしがあります。