60代の両親のための終の住処。
敷地は南面道路に巾広く接道しているものの、周囲は住宅が建て込んでおり、単純に南面に依存するだけでは安心感が得られない。どこか身体的なスケールに欠けたこの敷地のなかに、いかに小さな人間味のある空間を生み出せるだろうか。
大屋根一枚のシンプルで大らかな佇まいの建築でありつつも、その中に小さな空間体験を丁寧な積み重ね、洞窟のように奥行きと安心感のある環境をつくりだしたいと考えた。
延床面積は24坪弱とコンパクトだが、庭・土間・LDKが大屋根によって一続きになった空間は体感的にはゆったりと感じられ、決して窮屈ではない。
また、日常に必須な車のスペースは大きくゆとりを設けてある。ビルトインガレージから軒下を経由して玄関まで至る動線は、日常生活にゆとりをもたらすことでしょう。各所の素材についても、素朴で温かみのある「触れたくなる」ものであることを必須とした。
月並みな表現だが「量より質」を圧倒的に重視した。そして、終の住処での暮らしにとっての「質」とは何を指すのか、今一度深く考える機会となった。