広くて長い敷地の特徴をいかした平屋の住宅です。
タイトルにもなった長い1枚屋根があらゆる生活シーンをゆるやかに繋ぎます。
設計を依頼された当初、この敷地は緑豊かな畑でした。
近隣にとって、この敷地=畑は癒しであり、通風や採光の面でも貴重な場であることが、容易に想像できました。
この家の建築による近隣へのマイナスの影響を最小限に抑えること、自ずとこれが設計の重要なテーマとなりました。
そこで、この敷地の「場の力」を損なうことなく、近隣に対する負の影響を最小限に抑え、かつ景観としても周囲に貢献すべく、建物高さを最小に抑えられる平屋で計画を進めることとしました。
数多くの案を経た結果、敷地が細長い形状であったこともあり、全長約20mの長い一枚屋根で様々な生活シーンを緩やかに繋ぐオープンでシンプルな平屋の家に辿り着きました。
長手方向に諸室を並べ、それらを動線ともなる通り土間やウォークスルーのクローゼットで繋いだだけの極めてシンプルなプランは、屋根の長さや空間の繋がりを一層強調し、風通しがよく、自由で、季節や時間帯によって異なる様々な生活シーンを柔軟に受け入れてくれます。
外構の塀を敷地境界より敢えて後退させ、かつ高さを抑えることで生まれたオープンな庭は、建築後も以前の畑のような癒しを近隣に与え続けています。
・周囲に対してもよい景観を提供できる家にしてほしい。
・時が経っても味のある雰囲気の建物にしてほしい。
・エアコンが苦手なので身体にやさしい空調としてほしい。
建物の高さを抑えたり、屋根の勾配を近隣建物に調和させたり、塀を敷地境界より後退させるなどして、周囲に対する景観貢献につとめました。
使用した素材は、無垢の木材や漆喰など、安全かつ美しく歳を重ねる自然素材が中心です。
炭入りモルタルで仕上げた土間スペースは、夏にはヒンヤリと周囲の温度を下げることで通風を促し、冬には直下に設置した低温水式床暖房の熱を蓄熱することで長時間にわたり程良い温度環境を保つなど、身体への負担も少なく、季節ごとにその特徴を発揮します。