はじめて計画地を訪れた時、生垣の向こうに見える大きな瓦屋根の母屋と、その奥に姿を見せる蔵がとても印象的でした。
その旧家屋の建て替えにあたり、設計者として提案するテーマに責任と重みを感じました。
デザインを模索して辿り着いたのは、新しい建物と蔵の双方が引き立て合い、周りの建物とも調和する、和の趣に軽やかさと楽しさを加えた自由な空間でした。
軒が連なる切妻屋根と、旧家屋で使われていた障子を組み込んだ開口部は、どこか懐かしさを感じさせます。
一方で性能面は最先端の建材を使用した高気密高断熱住宅として、HEAT20のG2、東京ゼロエミ住宅水準3を取得しています。
この性能を生かし、小さなエネルギーで快適に過ごせるシンプルな空調が実現しました。
冬は基礎コンクリートの蓄熱性を利用した床下エアコンを稼働し、夏は2階から吹き抜けにエアコンの冷気を下ろす事で、空調の風を直接感じない心地よさを得る事ができました。
Photo by 繁田諭