八ヶ岳の麓に位置し、周囲を美しいカラマツ林に囲まれた敷地に建つ、2階建ての小さな住宅です。
自然豊かな地域での暮らしにおいて、車の存在は不可欠であり、雨天時に濡れずに乗降できるガレージの機能が求められました。敷地面積には余裕がある一方で、要望された床面積は小さく、敷地周辺が日本屈指の晴天率を誇るエリアであることから、限られた面積を駐車のみに使うことは非合理的と感じられました。
そこで、建物全体に大きな屋根をかけ、建築の南側半分を、駐車スペースから土間テラス、薪ストーブのある土間リビングまで一直線に連続させる計画としました。日常的には屋根の下に余裕をもって駐車できるスペースがあり、天候に左右されず荷物の出し入れをスムーズに行うことが可能です。一方で、晴れた日や人を招く際には、土間リビングの建具を開け放ち、室内外を横断した活動を可能にする可変性の高い軒下空間となります。
室内は、土間リビングやテラスと一体的に使用できるゆったりとしたダイニングスペース、吹き抜けとつながる子ども室、切妻屋根の形がそのまま表れるシンメトリーの寝室、東面に突き出して樹々を眺めながら仕事ができる小さなワークスペースなど、大屋根の下を使い切った個性的な部屋が連続します。
自然素材を活かしながら明るく上品な印象を与え、窓の外の緑が映える計画となるよう、素材は漆喰と杉板のみを使用して、ひとつひとつの面の切り替えを慎重に検討しています。
敷地の周囲には全方位に高さのあるカラマツの林が広がり、まっすぐに伸びる幹に囲まれています。軒を支える柱にはカラマツ材を用いて整然と並べ、外装はカラマツ材を縦張りで用いることで、周囲の垂直性と呼応しながら、自然に馴染むような佇まいを実現しました。
対称性があり、幾何学的な構成のプランと立面が、建築に秩序をもたらします。一方で、柱の面取りや土間テラスの端部の円形のつくり、手刻みの大工の菅原さんの丁寧かつ個性ある仕事が、細部にやわらかな印象を与え、全体のバランスをとっています。
敷地の魅力を存分に生かし、内外を一体的に使える懐の広い住宅を目指しました。
お施主様からは、賃貸として貸出し、将来的には自身が夫婦で居住する住宅として計画が求められました。予算的にかなり床面積としては小さくせざるを得ず、無駄のないプランニングが必要でした。また雨天時に駐車スペースとなるガレージの希望がありました。
敷地面積には余裕があったため、雨天時以外はガレージにとめなくても駐車が可能なことと、限られた面積をガレージのみに使うことは非合理的と感じられました。
そこで、建物全体に大屋根をかけて、その下をガレージ-土間テラス-土間リビングとつなげることで、屋内外を横断した、快適な軒下空間を作りました。
日常は雨に濡れないガレージとして使い、人を招く日には、土間リビングの窓を開放して、室内外を一体的に楽しむことができます。
南側からの外観
ガレージから土間テラス、土間リビングがつながっています。
薪ストーブがある土間リビングは外部の眺望を楽しみながら、あたたかな雰囲気でくつろぐことができます。
ダイニングは階段と一体になったベンチを椅子として使えます。吹き抜け上のフリースペースは、土間リビングに対して窓がつけられており、家の中で一体感を出すことができます。
キッチンのシンクには小窓があり、外の景色を楽しみながら料理をすることが可能です。
キッチン背面にはカウンターがあり、バースツールを置くことで、料理を見ながらお酒を飲むことが可能です。土間テラスに面しても窓があり、室内外を一体的に料理しながら楽しめます。
吹き抜け上のフリースペースは、吹き抜けに面して窓があります。あけることで、LDKとつながり、家の中での一体感を感じることができます。
切妻の棟からシンメトリーな寝室です。小さな入口の先にワークスペースが見えます。
寝室の先に、小さなワークスペースがあります。全面を木に囲まれたツリーハウスのような印象があり、緑を眺めて集中して仕事が可能です。
ワークスペースの照明が行灯のようにともります。
初回提案時から、プランや外観、設計の考え方をとても気に入っていただき、ほぼ最初の提案通りに実現することができました。
リビングやキッチンの居心地、ワークスペース等、それぞれの場所の広さや過ごした時の印象もとても喜んでいただけました。
設計時には、軒が深いことで室内が暗くなることを懸念されていましたが、室内の漆喰が光を反射し、実際にはとても落ち着きのある穏やかな明るさの室内に満足いただきました。