東京都内で計画中の住宅です。
敷地周辺は、武蔵野台地の先端に位置し、低地面である谷が複雑に入り組んで、舌状の丘を作り出しているエリアです。谷部分の最奥部に位置する敷地周囲は特に高低差が大きく、近辺を歩くことで地形の凹凸を肌で感じることができます。
我々は、間口が狭く奥行が長い敷地に対して、接道面に植栽ポットを一層分立ち上げて、住宅内部へのプライバシー性を確保しつつ、周囲に対しては豊かな緑を感じさせる柔らかいファサードを作ることを提案しました。
樹々を見上げる植栽ポットの隙間を「谷」と見立てて住宅へのアプローチ動線とし、あえて高さを抑えたほの暗い印象の玄関へと入っていきます。階段を上がった先には、目の前に緑が広がる「丘」の上を感じさせる明るく開放的な空間が待っています。地形のダイナミズムを住宅に取り入れた、「谷」から「丘」へ至る住まいです。
構造的には、RCの腰壁を段状にレベルをずらしながら設け、その上に高さを揃えた門型の木造フレームを載せることで、眺望を遮る側に耐力壁を設けず、南北に抜けた開放的な空間を実現しています。三段の屋根のレベル差から生まれる隙間で奥行の長い建物に採光を確保し、家中を光に満ちた計画としています。
常緑樹主体の庭は蒸散作用が高く、樹々の間を抜けてくることで風が冷やされます。南からの風を取り入れ、最も高さのある北側の奥から抜く通風に配慮した窓配置とすることで、中間期は窓を開けて快適に過ごせます。冬季は吹き抜け上に溜まった暖気をダクトで地下階まで循環することで、過度に空調に頼らない計画としています。
周囲の地形と敷地の条件を精緻に読み解いた「谷」から「丘」へと続く空間の流れを通じて、土地に根付いた感覚を持てる暮らしを目指しています。
南側に接道した、間口がせまく奥行の長い敷地でした。お施主様は、敷地形状の特性から暗いLDKになることを懸念されていました。また、庭や樹木がお好きで庭を見ながら過ごしたいものの、敷地が南面なので、玄関とLDKをどのように両立した方が良いかについて、悩まれていました。
せっかくの南向きの敷地を最大限生かすよう、屋根面を三段にして、その隙間から光を入れることにより、建物の奥まで自然光が入る明るい空間を実現しました。
建物前面に植栽ポットを段上に立ち上げることで、道路からの視線隠しと、室内からの庭としての眺めを両立させています。
半地下部分を作り、室内をスキップフロアにすることで、メイン空間のどこからでもテラスとそれにつながる庭を眺められる計画としました。
段上にすこしづつ高さの上がる植栽ポットの隙間が建物へのアプローチとなります。植えている草木や花々を近くで感じることができます。
あえて高さを抑えた、少し暗めの玄関ポーチです。ブラケットライトが映えます。
ハイサイドライトから光が入る玄関です。光に導かれるように、階段を上がります。
階段をあがると、天井が高く自然光が満ちる、明るい空間に出ます。抑制された玄関を抜けるからこそ、開放感がより一層際立ちます。
リビングは窓の先の緑を眺めながらくつろげる空間です。
壁に囲われ、植栽のみにフォーカスできるテラスです。
スキップフロアでつながる開放的なリビングダイニングです。
ワークスペースの扉は開放可能とすることで、普段はLDKと一体的な明るい空間で仕事が可能です。
現在工事中の住宅になります。初回プレゼン時に提案した、植栽の高さを上げることで視線隠しと庭としての眺めを両立する、という提案を気に入っていただき、計画を進めています。