京都伏見の川に面して建つこの住まいは、1階をワークスペース・2階を住居とした住まいです。内外ともに素材の質感を大切に、そのままあらわしています。
酒蔵も多く建つ地域に合わせて外壁には黒の焼杉を張り、傷みやすい1階部分のみ小波鉄板としています。隣地側を一段下げた2段の屋根とし、室内にも屋根を支える2段の高さの木材がそのままあらわされています。
内部の壁・天井も粗いべニア板張りとして、窓周りも枠がなくべニア切り放しのままです。1階のワークスペースでは土間をモルタルも塗らず基礎のコンクリートのままとし、天井は張らずに2階の床裏をあらわしとしています。
建物の構造も仕上げも裏表のない正直な素のままの住まいは、それゆえに誤魔化しのきかない造りです。
多くの職人の気の遠くなる手間と気配りこそがこの住まいの仕上げ材料です。
外観全景:黒の焼杉板と小波鉄板の外壁です。1階の使い方に応じて3か所の出入り口があります。
外観夜景:通りに面しては明かりも開口も抑制し、なかの生活を見えにくくしています。 道路沿いには同じ焼杉を用いた小塀を設けています。 小塀の裏のモミジを足元から照らしています。
3か所ある出入口のうち、ワークスペースと住戸に繋がるメインの玄関です。 階段は抜けと軽さを活かした造りです。 正面は川に面する開口です。
1階ショップからワークスペース・玄関を見た様子です。 それぞれのスペース間には間仕切り壁がなく、床仕上げ材の違いと柱とでエリアが区画されています。 壁はべニア素地、天井は2階の床あらわし、ショップの床はコンクリート底盤のまま、という素の仕上げです。
2階広間(LDK):広間は2段の屋根の仕組みをそのままあらわした造りです。 床はウォールナット、壁はべニアのオイル仕上げです。
2階広間(LDK):屋根を構成する木材の間に照明器具を組み入れています。 正面には川に面して大きく開く出窓を設けています。 左側は川に臨むテラスです。
ステンレスのアイランドキッチンとべニアで造った食器棚です。 食器棚の裏が階段、その奥が個室です。 上部の三角の開口を通して個室の天井が見えます。
2階 川に面する出窓:広間の川に面する出窓はベンチともなり、川面を見下ろします。
2階テラス:川に開いて広いテラスを設けています。
2階個室:個室は広間と趣きを変えて壁天井を白く仕上げています。上部の三角の窓が広間とつながります。