◼️新宿Y邸
ー家族の集散が空間の満ち引きとなって現れる住宅ー
子育てを終えた夫婦の「終の住処」となるマンションリフォーム計画。
こうした場合、夫婦を主題とした二項対立的なプラン事例をよく目にするが、子供が独立したからと言って、親の家から痕跡が消えるものではない。
子供が独身の時は、たまに帰って来た時の寝床を考えるし、結婚したり、子供が出来た場合を想定した場所づくりも考える。その結果、プラン上に殊更大きな部屋が出来たり、余計な場所に間仕切りの建具があったりする。結局、こうした操作が、「図式的なプラン」を崩すことにもなるけれど、その崩れ具合こそ、住み手が持つ家族関係の「個性」ではないかと考える。
本計画では、設備コアを中心とした回遊形式のプランを基に子供との関係も織り込んだ住み方の想定を繰り返しながらプランを練った。
玄関を入ると現れる「木の箱」(=設備コア)を中心に、洗面台や収納が並ぶ〈生活動線〉と右から迂回して2つの小空間を通り抜ける〈空間動線〉がLDKで繋がって回遊することになる。
夫婦二人暮らしの時、家人がLDKに行き来する場合は〈生活動線〉、来客などのパブリッックな場面では生活感を隠し易い〈空間動線〉を用いる。〈空間動線〉はこの他、オープンなフリースペースとして、在宅勤務の仕事場や趣味のギャラリーなどにも使う。ただし、入浴時のようにどちらかが水回りを用いる際は、一時的に〈生活動線〉を塞いで〈空間動線〉を用いる。
一方、子供が帰省した時は、〈空間動線〉の室1か室2、または両方を個室化し、LDKへの通路には〈生活動線〉を用いる。室1と室2は、設備コア周りに組み込んだ間仕切り建具の開閉によりLDKに連なる小さな空間が現れたり、消えたりする。
家族の集散が空間の満ち引きとなって現れる住宅を考えた。
子供が帰省した際の個室に分節可能な〈空間動線〉をLDK側より見る
個室化する〈空間動線〉は、建具の開閉により2室(室1・2)に分節される
第二の建具を閉じた状態。 夫婦で生活する際は、在宅勤務時のSOHOとなる。 窓際には、デスクが造りつけられている。 南西からの強い日差しに対応して窓にはインナーサッシを取り付けた。 側壁の有孔べニアはフック金物を掛けられる仕様となっている
室2は、SOHOより少し大きめの空間。 子供が寝泊まりする際の個室を想定した
室1側よりLDKを見る。 左側のモルタル掻き落し壁は冬場の日差しの蓄熱を意図している
キッチン〜LD〜ベランダのつながり ベランダの床は、LDの床と高さを合わせている
右上、吊り照明は、ダイニングテーブル位置を想定して設置。 LDの床はオークの無垢フリーリング。 キッチンのカウンタートップは、ステンレス製
ユーティリティの使用を想定して〈生活動線〉上の建具を閉じた状態
洗面台・脱衣室・浴室・トイレを繋げた状態
個室としてキープされた寝室の内観。 左が、ウォークインクローゼットの木製壁。 内部は、生石灰クリーム塗り