1915年建築の「蔵」を改装したキッチンショールーム計画。
名古屋市認定建造物資産として認定された杉本家蔵に対して、伝統ある内装を継承しながら、新たなデザインを加えるために照明に着目した。
この蔵は名古屋市の四間道のほど近いエリアにあり、1610年の名古屋城の築城とほぼ同時期に開削された堀川の舟運で栄えた商人の街であるため、この堀川の「波」によって運ばれた物資で活性化したことを踏襲し、人や物資などを含めて様々な人の思いやアイデアがこの蔵に運ばれ、希望のオーダーキッチンが実現するように蔵の中に「波」をつくろうと考えた。
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光の波によって、人、モノ、想いを運ぶ
「light wave」
建築面積約12坪、延床面積約24坪の空間であり、道路面から階段を上がって1階フロア、さらに階段で2階フロアへ行く動線に対して、階段を上るという行為に魅力を持たせ、上を見上げたくなるように製作照明で動線を誘導しながら1台しかないキッチンへといざなうことを計画した。
キッチンに関しては石の名前から取っているこのキッチンブランドのイメージを強調するために、蔵の中に石の塊を置くことをコンセプトとした。角を面取りして無骨な形で表現しながらシンプルなフォルムとし、照明と既存の蔵の内装とのバランスを取った。
入口から1階へ上がる階段壁には既存の蔵で使われていた杉板を墨色で塗装して整えている。また名古屋出身で戦国時代に日本統一を成し遂げた豊臣秀吉の馬印であるひょうたんを手摺の一部に採用し、名古屋から日本全国へ事業を展開しようとするクライアントの想いをのせた。
1600年代に名古屋城から堀川の波によって運ばれた人や物資で栄えたこのエリアの蔵に対して、次は「光の波」によって人々の希望やアイデアを運ぶ空間として昇華させた計画である。