名古屋市の住宅地に建つ家族3人のための住宅である。敷地は、急勾配の傾斜地であり、35mの奥行に対して、全体の高低差は14mにも及ぶ。そこに、道路側から生活に求められるスペースを配置すると、高低差が8mほど、居住スペースとしては、3層分の高低差になった。しかし、低いシルエットの建築になるべきだと考え、上に積むのではなく、土地の傾斜に沿って、3つの箱をひな壇上に斜めに並べた。
そして、単なる「ひな壇」の空間では、空間はブツ切れになってしまうように思えたので、メインとなる居間のスペースからの目線が、最上部まで連続的につながる空間を目指した。
そのために、上下階や屋外を繋ぐ3つのささやかな仕掛けを設けた。
1つ目は、吹き抜けに設けた45度の斜壁である。この斜壁が上下階の中間物となることで、吹き抜けがひとつの独立した空間ではなくなり、上下階が、まったく連続した空間となった。また、天井の切り替え線にも45度斜線を使うことで、視線の繋がりはさらに広がった。
2つ目が、床と壁を同じチークで作った塊上の階段である。この塊階段により、床と壁は一体になり、1階と2階は文字通りシームレスに繋がる空間になった。
そして3つ目は、リビングに設けた長い高窓である。この6.3mx2.0mの窓は、1階に目線の上から差し込む光線をもたらし、視線を上から下に導く。そして、2階ではこの窓から、外の緑が全面に見えることで、内外を繋ぐ。
これらを設けることで、視線を繋げるだけでなく、歩く度、時が経つごとに光景が変化する建築となった。