神話の国・出雲に完成した画像診断クリニック「PICTORUいずも画像診断室」
MRIは大学病院や総合病院でのみに設置され、予約による長い順番待ちや紹介状のみでの対応など敷居が高いものとなっています。それらの高度な画像診断を地域にクリニックと連携し、より気軽に受診できる環境と迅速で的確な診断を提供することで”画像診断で地域の医療を支える”をコンセプトに計画されました。
画像診断のためにここへ訪れる来院者は大きな不安を抱えています。機能優先・動線重視の病院施設において、暗くなりがちな待合スペース。そこで待つ来院者の不安を少しでも和らげることをテーマに「外光が射し込む明るい木造のクリニック」を目指しました。
MRI室等は機能上必要とされる高さを確保し、上部に屋外機械を設置しています。MRIの磁気・騒音・光などの遮蔽のため、屋上の有効利用のため遮蔽と耐力に優れるRC造を採用し、極力閉じられたコンクリートとなっています。特に隣地への機器騒音・景観に配慮し外周はコンクリート外壁を立ち上げています。
一方、待合スペースや診察室等は上部に向けて反り上がる木造屋根とし、隙間のハイサイドライトから光を取り込み、光が射し込む明るい内部空間を実現しました。
同じ敷地内には既に建っているクリニックモールがありました。当クリニックは既存クリニックモールと隣接し、一体的な利用もなされることからスムーズな接続による使いやすさと既存クリニックと連続する他とは違う特徴あるクリニックを要望されました。
隣接する既存クリニックは、杉板型枠コンクリート打放外壁と波打つ鉄板屋根で構成された特徴ある建築でした。新しい画像診断専門クリニックはそれ自体独立したクリニックですが、渡り廊下で繋がった既存クリニックと一体的な利用もなされることから、杉板型枠コンクリート打放と杉板外壁と反り上がる木造屋根とし、既存クリニックとの親和性と特異性を同時に持たせる外観としました。
また、片勾配の木造屋根は瓦のようなSUS亜鉛メッキ鋼板の採用し地域の環境との調和を図っています。
待合空間や渡り廊下の床材には石州瓦をリサイクルしたオリジナルの床材を使用しています。出雲地方で採掘される来待石(きまちいし)を釉薬として使用する石州瓦は山陰地方で見られる独特の屋根の町並みや集落を生み出す赤い瓦であり、テラゾーブロックの種石に使うことで地域の色を活かした優しい色味のある平坦で躓きにくい床材を実現しました。瓦屋根が減り苦戦する石州瓦メーカーが廃瓦の再利用を模索しているところ、建材としての製品化を目標に製作しています。
来院者の動線が1階で完結する計画となっています。待合スペースを中央に配置し、東側に事務室・診察室、西側にMRI室等とした利用しやすくわかりやすい計画としています。 操作室間と休憩スペースを直接接続したスムーズな医師・技師動線と事務室・診察室を連続配置した医師・看護師動線を確保しています。 また、将来の機器増設や更新・メンテナンスにも配慮し、搬入等の経路を確保しています。特にMRIの増設・更新について対応可能な設備スペース、経路、搬出入動線の確保に配慮しています。
MRI室の他、四肢用MRI室を配置しています。 検査室は遮音やシールドにおいて有利なコンクリートの箱でつくり、機能性の高い秒針施設としています。
クリニックは2016年4月から順調に稼働しています。
竣工後、部分的な不具合などありましたがそれぞれについて順次対応させていただき、解決しています。
本建物引渡し後も、引き続き業務依頼をいただけています