大阪市内の道幅の狭い密集地に建つ小さな家です。
クライアントは敷地探しの段階から弊社にお越しいただきました。
いくつかの候補地を一緒に回り、最終的に間口3.74m奥行16.31mの細長い形状のこの敷地に決められました。
計画にあたって、ご要望の一つに、写真や絵本、置物などを飾る場所を希望されました。 一方で敷地は比較的小さく、必要な居室をコンパクトにまとめなければいけない上、 複数階になるため階段スペースも必要となります。
また、住宅密集地のため外の景色もあまり望めません。
そこで、上記の問題を一挙に解決する方法として、棚にも、居場所にもなり、
家の中の景色にもなる「棚階段」というものを検討しました。
「棚階段」は建物本体と構造的に分離されています。
「棚階段」とその前後のスキップフロアの間にはスリットが設けられ、
分離している様子を視覚的に表現しています。
そして、そのスリットからはあえかな光が差し込みます。
「棚階段」は通路であり、棚であり、デスクであり、居場所です。
上り下りすると、棚の森の中を立体的に潜り泳ぐよう景色が広がります。
棚階段が暮らしの中心になるようレイアウトしたおかげで、実用的です。
靴や洗面雑貨、洗濯用品などなど。飾り棚に並べられた日々の暮らしの雑貨は、
どこか楽し気に見えてきます。
棚階段を上りきると、棚に溶け込んだデスクがあり、そこは書斎となります。
段板はやわらかいパイン材から作られています。
スリットから落ちてくるやわらかい光は木漏れ日のようなまばらな影を落とし、
ふと座って本を読みたくなるような居心地のいい居場所にもなります。
そして、竣工後にはこの家に猫が仲間入りし、
この「棚階段」は大きなキャットタワーにもなっているとのことでした。