ご両親が長年営んでいた青果店の閉店後、リフォームを経て、次男さんのご夫婦との二世帯住宅へ建て替えることに。敷地はさまざまな用途の建物が混在する準工業地域にあります。
「帰ってきたくなる、家族との楽しい思い出が生まれる空間、二世帯のほどよい距離感と交流」を家づくりのテーマ。玄関と水廻り(お風呂)を共有した二世帯住宅とし、子供や愛犬を遊ばせられる庭があることがご要望でした。
北側に駐車・駐輪スペース(車3台・バイク・自転車3台)とアプローチ・ポーチを設け、建物は変形の敷地形状に沿わせて「への字」型に配置。その結果、南西側に大きな庭をもうけることができ、旧宅から庭に育つミカンの木を、世代を繋いで育っていくこの二世帯住宅のシンボルとして残すことができました。玄関や水廻りには2ウェイの動線を設けるなど、限られた面積のなかで、ほどよい距離感を保って生活しやすいように、建築的な仕掛けを組み入れています。[photo:S.Osawa]
玄関を入るとミカンの木が見える。正面に上がると1階の親世帯へ、左に上がると2階の子世帯へ。
水廻り(浴室と洗面)には親世帯側と子世帯側、それぞれのエリアから入れるようになっている。
対面式のダイニングキッチン。奥の和室は建具で仕切ることもでき、親戚の宿泊にも利用。
左には縁側のようなデッキテラスがあり、その外にミカンの植わる南の庭が広がる。
1階は親世帯で正面にダイニングキッチン、右側に寝室がある。2階は子世帯で左上にデッキテラスが見える。
床はバーチのフローリングで、傾斜天井にはロシアンバーチ合板を張った柔らかい表情のインテリア。
西日を遮り、道路から室内のプライバシーを守るデッキテラス。屋根がかかり、テーブルを出してお茶を飲んだり物干しにも利用する。
室内は柱のない折れ曲がったワンルームの空間で、右奥に将来仕切ることができるキッズスペースがあり、さらに多くに行くと主寝室がある。
将来子供室にはロフトもでき、天井にはトップライトがある。右の壁の裏には2階のトイレと洗面コーナーがある。
二面道路の道路に面した変形敷地。北側には3台の駐車スペースと玄関アプローチ。2階デッキテラスの三角形の開口から光が漏れ出る。
OZONE 家づくりストーリー 「ほどよい距離感とオープン性で快適&楽しい二世帯住宅」より抜粋掲載
<子どもに目が届きやすい緩やかな平面構成>
敷地は北側と南西側の2面が道路に接する変形敷地。建築家の石井正博さん+近藤民子さんは、ここに敷地形状を生かした「へ」の字型の2階建てをプラン。1階が親世帯、2階が子世帯で、ともに空間が緩やかに折れ曲がって連続する開放的な構成です。「間仕切りがないので動きやすく、子どもに目が届くため安心して家事がこなせます」と奥さま。また、2階の子世帯の寝室から、対角線上に1階親世帯のLDが望めるなど、双方の気配がさりげなく伝わる安心感も得られました。
<2ウェイ動線の確保で共用部も使いやすく>
H邸ではキッチンは二世帯別々で、1階にある玄関や浴室は共用。共用といっても玄関も浴室も2ウェイの動線があり、どちらの世帯も使いやすい設計になっています。「要望は、お互いに干渉しすぎないで暮らせること。適度な距離感を持ちながら交流し、助け合っていけたらと思います」(ご主人)。