靖国神社の向かい、靖国通り沿いに建つ地下1階地上10階からなるオフィスビルである。52m2ほどの敷地いっぱいに建つペンシルビルだ。低層階からは通りの桜越しに靖国神社を臨み、高層階からは先に広がる東京が一望できる。細長いビルは施工費が割高になる傾向はあるのだが、立地がよいために十分にパフォーマンスできる。外壁の輪郭は施工可能な敷地境界からの寸法から割り出され、建物内も、最大限効率のよい動線からプランされている。構造は、施工性を考慮して鉄骨造が選択される。
下部の2フロアは貸店舗である。道路面からはスキップフロアを形成して、2店舗とも路面店に近い状態で配置している。オフィスのエントランスホールへは階段を半階登ってアプローチ。各階へはエレーベーターでアクセスする。基準階は、1フロア1テナントとして共用部をつくらず、避難上の屋外階段とバルコニーを確保しつつ、使い勝手の良い平面を目指した。
外観は、ガラス面・バルコニー(ガラス)・屋外階段、それぞれが3分の1ほどずつとなった。内部からの開放感を重視して透過性の高さを重要視しているのだが、屋外階段が無骨になりやすい。高層ビルになると、通常時には役たたなくなるのに。そこで、その階段をポジティブに捉えることとして、低層部には密度の濃い緑を、高層部にはある程度透過性のある緑を設置して包むこととした。鉄骨の構造には耐火のために被覆を施す必要があるが、仕上げには木材を採用している。ほか、リン酸処理した亜鉛めっき鋼板、ステンレス、アルミ、落ち着いた色彩の仕上げ材を採用している。
ゆくゆく豊かになっていく壁面の緑と、街路樹の桜が映えるように。通りを豊かにしてくれると嬉しい。