両親2人、夫婦2人+子供3人が暮らす二世帯住宅。大きな特徴としては、縁側が長いこと。両世帯のLDKや和室を外部空間で繋いでいます。外壁の黒い板張りと、飴色をした軒天とのコントラストが美しく、雁行しながら奥へ奥へと繋がっており、その全長は25メートルもあります。玄関は共有し、荷物の多い子世帯には玄関クロークを兼ねた5帖の内玄関を設けています。ロフト空間は、16帖あり、吹抜を介して下の子供部屋と繋がっていたり、両世帯が大きなロフトを共有できるように階段は2か所とし、世帯間で回遊できる構成。子世帯には7.5帖の吹抜があり、それに面して長さ3.5mのファミリーデスクがあります。そこから見る景色は、室内に薪ストーブが鎮座、その背面に手づくりタイルが貼られ、大きな窓の向こうには、祖父母が住む瓦屋根の実家が臨めます。板張り天井、焼竹網代天井、江戸から紙、深岩石、花ブロックといった素材をはじめ、こだわり所が満載で、大工さん、職人さんたち手づくりの痕跡が詰まった住宅です。
シーサーがお出迎え。左手の塀には「花ブロック」。沖縄特有の幾何学模様の穴あきコンクリートブロック。沖縄より船便でお取り寄せ。アプローチの両脇にはヒメシャラとジューンベリー、足元にはグランドカバーとしてのハーブを植えています。飛び石の先には、おじいちゃんが大切にしている畑や、裏手にある祖父母が住む実家への抜け道になっています。
吹抜のある子世帯LDK。吹抜に面した2階にはファミリーデスクが面し、大きな空間を形成。2階正面の小窓の向こうは、末っ子Nちゃんのお部屋。顔を覗かせて楽しいコミュニケーションを取れるとともに、薪ストーブの暖かさを享受することができます。
奥さまから「キッチンの正面に階段を」との要望。子どもたちの動きが見やすいということもあるのですが、階段の稲妻形状が好きなのだそうです。天井には無垢の栂を張っています。節がなく(少なく)、年輪の幅が狭く、肌理は密、優しい風合い。
LDKには、薪ストーブがシンボリックに鎮座。薪ストーブに視線が向かう空間づくり。薪が沢山入る庫内が大きいものをチョイス。火持ちがよくパワフル。焼き芋はもちろんのこと、鍋ごと放り込んだ料理も楽しむことができます!
キッチンからは、和室でお昼寝する子供の様子を見ることができます。キッチンの背面(写真左手)は洗面脱衣室とし、家事動線をコンパクトに。和室は洗濯物をたたむスペースでもあります。数寄屋素材を用いながらも、現代的な住宅に合う設えにしています。
子世帯の和室から縁側を見通した様子。軒の深さは、1.2m。軒は、雁行しながら奥へ奥へと伸びており、その全長は25メートルもあります。対岸には、親世帯の和室を配置し、適度な距離感を保っています。縁甲板はナグリ。手触り、足触りが良い仕上げ。
吹抜に面したファミリーデスク。長さは3.6m。4人がゆったりと座ることのできる大きさ。デスクの下には本棚。正面には、南に面した大きな窓。祖父母が住む瓦屋根の実家を臨むことができます。吹抜を貫く薪ストーブの煙突と手づくりのタイル越しに。
ロフト空間は16帖。障子で仕切ることができます。薪ストーブの暖気がロフトに逃げたり、その暖気が籠るのを遮るために設けたもの。また夏場や中間期に障子を開けておくと、家全体が重力換気を活かした風通しの良い空間にもなるのです。
こちらの住宅には『縁の繋がる家』と名付けました。縁側が長く繋がっているという形態的なこともあるのですが、両親、若夫婦、子供たち、さらにお隣に住む祖父母、妹家族、また親族が集まってくる仲睦まじい大家族であることが由縁です。