都心に建てられた木造3階建ての住宅。敷地の形状は間口4m、奥行き14.5m、所謂「うなぎの寝床」。このような場所で豊かに暮らすには、それなりの工夫も必要です。この敷地特性を上手く活かすため、内部は階段を挟んだスキップフロアで構成し、各フロアが緩やかに繋がり、奥行きのある空間となっております。玄関ドアを奥の方の脇に設けていることも特徴です。狭い敷地ながらも人の歩く距離を長くすることにより、路地の奥に惹き込まれるような、豊かなアプローチを造り出そうと考えました。
玄関の様子。正面には濃紺の越前和紙が貼られた下足入れ。足元は浮かせて飾り棚に。下足入下部には間接照明が仕込まれており、昼間は自然光、夜は間接照明へと趣が変わります。左手には淡いモスグリーンの越前和紙が壁面一杯に貼られ、扉を開けると大容量の納戸。
階段を挟んで「向うのフロア」と「手前のフロア」とが互い違いになる構成。スキップフロアの空間は、視覚的にも機能的にも如何に生活に馴染ませるかがポイント。デザイン的なことだけでなく、重力(温度差)換気のスペースとしても活用することも可能です。
中2階に設けたキッチンスペース。中央には、長さ1.9mの作業台を設置。足元には、家電やゴミ箱などが収納されます。軽食や子供の勉強スペースなど、用途に多様性を持たせております。作業台の背面には、大きな壁面収納も設け、豊富な収納量を確保しました。
「独立した広いキッチンスペースが欲しい、そのことによって、LDが広くなるなら、なお良し」との要望。ということで、このようにキッチンとLDとが半階スキップした空間になりました。キッチンは奥さまが一番長く居る場所。子供が帰ってきた様子も一目で分かります。
2階に設けたLDの様子。奥に見える中2階はキッチン空間、中3階は水廻り空間、3階は寝室空間です。吹抜けを介して、2階と3階とがダイナミックに繋がっている様子が感じられます。左手に設けられた造付家具や間接照明が、空間の一体感を演出しております。
窓に向かって腰を掛けると、爽やかな気分になりますね。バルコニーをエキスパンドメタルで覆っているので、周囲からの視線も気になりません。プライバシーを確保しつつ、バルコニーを中間領域として取り入れました。都心の狭小地で豊かに暮らすための工夫です。
スキップフロアの空間を開放的に繋ぐには、階段の設計は重要。単なる移動空間として捉えるのではなく、吹抜けの一部として組み込み、横方向への広がりを生み、彫刻的に、そんな階段を目指しました。人の動きとともに、光の取り入れ方や風の流れをも設計しています。
3階の階段踊場から寝室を、その向こうには吹抜、スノコブリッジを渡った向こうがルーフバルコニーといった具合に見通した様子。3階のルーフバルコニーから取り込まれた自然光は、3階だけでなく、吹抜やスノコブリッジを介して、2階のLDにも取り込まれます。
3階のルーフバルコニーから吹抜けを、すのこブリッジを渡った向こうには寝室、その向こうには階段室、更にその向うにはロフトといった具合に見通せます。本宅では、この『見通し』を大切に設計をしました。建物間口3mの細長い住宅です。その個性を活かし、奥行きのある内部構成となっております。