西国三十三所のひとつに数えられる総持寺を有するこの地の歴史は古く、旧家の立ち並ぶ古い町並みが残っているが、 近年再開発の予定があり、町は新しく生まれ変わろうとしている過渡期でもある。
お施主様は幼い頃から植物が好きで、緑に囲まれて暮らすという夢をかなえつつ、 お客様をもてなしたり仕事の会議に利用したりできるフォーマルエリアと、普段の生活のためのファミリーエリアに、 機能的に主客分離した住宅をご要望された。
そこで、それぞれのエリアは動線的・視線的に交わることは無いが、テーマの違う三つの庭でゆるやかにつながっている構成となるように工夫をした。
1,樹齢二百年を超えるスペインのオリーブと迫力のある景石で構成されたオリーブガーデン
2. ハウチワカエデ・アオダモ・ハクサンボク等の雑木と丹波石・木曽石・和束石等の石材からなる雑木の庭
3. 浴室のプライバシーを保ちつつ緩やかに他の庭とつながる和の石庭
ファミリーテラスに出れば、大自然に囲まれたような感覚で、食事を楽しめ、2階の客間は、窓を持つ特殊な床の間のデザインとして、庭とのつながりで浮遊感を感じる。 お客様をもてなすフォーマルダイニングでは、敷地の東西方向を端から端まで感じられる最も奥行を活かした配置で、オリーブガーデンと雑木の庭の両方が見渡せる。
そして、それらのすべてをつなぐプランの中心にはダイナミックな吹き抜け空間があり、無垢スチールを使うことで可能な限り繊細なフレームを実現した大きな窓を通し、水盤の光の反射が、室内へと風景を取り込む。
建物のどこにいても縁を望むことができ、場所ごとに違った様相がある。
いつも四季折々の風情を感じ、時節とともに暮らしを楽しむことができるだろう。