敷地周辺は近鉄学園前駅から近く、奈良の高級ベットタウンとして閑静な住宅地が広がる。
周辺の建物はRC造などボリュームのある住宅が数多くある地域である。
クライアントのご要望は「おしゃれな外観」「庭とつながる広いリビング」「四季を楽しめる家」であった。
敷地南北の住宅がコンクリート打ち放し住宅であった為、素材を連続させ環境をつくる事を意図した。
周辺環境のバランスを保ち、適度な緊張・均衡状態を保つ外観の仕上げとして、杉型枠コンクリート打放しを採用した。
杉型枠仕上げとする事で、無機質なコンクリートの表面に木の優しさ・暖かさを付加し町並みが冷たい印象にならないように配慮した。
また、外構塀を白い左官壁とすることで、建物全体の単調さをなくし、奥行きと変化を与えている。
町並みとの調和・白い壁とのバランス・適所に配された木々により単純な矩形の外観でありながら、それは普遍的な美しさへと変化する。
リビングの3枚引込戸を全開にすることで、リビングは中庭と一体となり、その目線は奥のステージへと向かう。
敷地の高低差を利用し、中2階のレベルとした駐車場の屋根部分はモミジが色づく水面のステージである。
目線の変化・回遊性を与える装置としてもその役割を担うステージは空へと広がり、内部空間は空へとつながる。
春、シンボルツリーのカツラの木が美しい新緑を町並みに届ける庭に配されたヤマボウシやシマトネリコが内部へと風と共に春を運ぶ。
厳しい太陽の光と深緑が夏を謳歌し赤く色づいたモミジの葉が秋を伝え、土間の紅葉が冬の訪れを告げる。
木々が鳥や風が、四季を伝え、笑顔を生み、笑い声が聞こえる。
そんな住まいである。