日本初の3Dプリンター住宅メーカー
セレンディクスが目指す
住宅ローンからの解放と
自由と幸せが両立する未来

2023-04-25更新
日本初の3Dプリンター住宅メーカー セレンディクスが目指す住宅ローンからの解放と 自由と幸せが両立する未来
提供:CLOUDS Architecture Office

建築費用の上昇が続く中、従来では考えられない低コスト、短工期で住宅を建てられる3Dプリンターハウスに注目が集まっています。 その最先端である330万円でRC住宅を販売した日本初の3Dプリンターハウスメーカー、セレンディクス社COOの飯田 國大さんにお話を伺いました。

「日本初の3Dプリンターハウスメーカー」として注目を浴びていらっしゃいますが、どのような会社なのでしょうか。

飯田さん

弊社CEOの小間は、京都大学発スタートアップでEVの会社を成功させ、世界最先端のEVをつくりました。その次のプロジェクトとして、世界最先端の家を創りたいと考え起業したのがセレンディクスです。

日本人の住宅ローンの平均完済期限は73歳。住宅ローンを組める方はまだ良いのですが、日本人の4割の方は住宅ローンを組めず、一生住宅を持てないという状況があります。しかもこの数値は、過去10年間で10%も上昇しています。

一度しかない人生をもっと自由に、30年の住宅ローンにしばられずに自由に生きられるように、そうした志をもとに始まりました。
セレンディクスでは既存の方法によらず、家をゼロから再発明しています。具体的には、家をロボットが作る方法であり、将来的には延床面積100平米の家を、300万円で実現することを目指しています。
このように車を買う値段で家を買えれば、たくさんの方がより自由に、幸せに生きられる社会になると考えています。

車を買う値段で家を買える。すごいですね。 他にも3Dプリンタ住宅を開発している企業がありますが、貴社はどのような特徴があるのでしょうか。

飯田さん

世界の3Dプリンター住宅は、今までの住宅建築の延長線で進んでいます。
壁だけを3Dプリンターで出力し、屋根は人が介在して施工する方法です。そのため、施工期間は半年かかり、コストも3割くらいしか下がりません。

セレンディクスの開発した『スフィア』は、形状を球体とすることで、世界で初めて、屋根まで一体成型で3Dプリンター住宅を建てることに成功しました。
このことにより施工時間は24時間以内に、人件費も大幅に抑えられるため価格は車を買える値段まで下げられます。

この技術で、特許出願を8件、意匠登録も3件行っています。さらにはコンクリート単一素材に複合的な機能を持たせています。
例えば断熱性においては壁面を二重構造にすることで、ヨーロッパの厳しい断熱基準をクリアしています。この点は環境省の住宅の脱炭素化の技術開発にも取り上げられています。

耐震についても日本の耐震基準をクリアしており、3Dプリンター住宅としては世界最高峰レベルといえます。
デザインは、NASAの火星移住プロジェクトを進めている曽野正之氏が手掛けました。

しかし我々だけでは実現できないため、現在この世界最先端の家を創る企業コンソーシアムには協力企業が189社加盟しており、その売上をすべて足すと15兆円にも上ります。
世界各国の建設用3Dプリンターメーカーや、施工会社と協力しながらプロジェクトを進めています。

提供:セレンディクス

安く早くできるだけでなく、機能性・安全性も高い家なのですね。 躯体は3Dプリンターで創るイメージができるのですが、電気、水道など、建物本体以外の工事はどのようにされるのでしょうか。

飯田さん

現状は、電気、水道は別々の職人さんに対応していただく既存の方法と同じです。
いずれは海外のように水回りも電気も窓も一人の職人さんが行うスタイルに改善していきたいと考えています。

今までの塗装は何度も塗って乾くまで待つ、ということを繰り返しますが、一度塗りですべて終わる塗料もありますし、工場で塗装すれば足場も必要ありません。
電気などのライフラインも、元々専用の穴を空けて『見えてもよい』意匠にすれば後から躯体に穴をあける必要がありません。

他にもいろいろありますが、これまでの住宅の作り方の概念を完全に変えていきたいと考えています。新しい技術により変革をしていきます。

家そのものだけでなく、創り方、進め方も含めて改善・変革を進めていかれるのですね。

飯田さん

はい、『3Dプリンター住宅』が我々の最終目的ではなく、世界最先端の家を創りたいと思っています。

美しい自然環境の中にある、世界最先端の家。家の中に入った時に、直感的に強く未来を感じる家。世界最先端の家で人類を豊かにする、というのが我々のビジョンです。

家の中での環境映像、IOT、セキュリティ、オフグリッド化・・・未来のベッドも考えています。現在こうした10個のプロダクト技術を進めており、中には特許出願しているものもあります。

内装については、昨年サンワカンパニーさんと業務提携を行いました。 建材が分かりやすい形で選べるので、そうした仕様で内装を作れるようにしていきたいと考えています。

そのままで良いという方はシンプルに使っていただき、カスタマイズしたい人には、プラスアルファの仕様を実装できるようにしていきたいです。例えば新車を買うと、デフォルトの仕様があり、オプションでグレードアップしていきますよね。そのようなイメージです。

提供:CLOUDS Architecture Office

最新の技術を活かした、『未来を感じる家』ですね。内装も、住む方の自由に、と。 「美しい自然環境の中」とは、どのような意図でしょうか。

飯田さん

今までは、不動産購入の際は都市中心部からの距離が重要でした。これからは、移動時間が大事になります。
具体的には、政令指定都市から90分の距離、2025年に出てくる『空飛ぶクルマ』であれば15分で行けるエリアで開発を進めます。

現状の土地の価格は東京中央区だと100平米で5億円します。、福岡市でも100平米5000万円です。このレベルでは、一般の方では住宅ローンを組むのさえは難しい状況です。

一方で私が住んでいる大分県の天瀬町は福岡市から車で90分ですが、100平米20万円程度で購入できます。このような土地が安く、自然環境豊かな場所に建てていきたいですね。

都市部ではなく地方に。

飯田さん

そうですね。
都市部に住まなければならないのは、仕事などの目的の場所に通わないといけないからです。仕事をデジタル化すれば通う必要はなくなります。

一例としてサービス業はデジタル化できないといわれてきましたが、現在は病気や障害などで外出が困難な人が、分身のロボットを操作して接客を行うカフェもあります。
このような革新的な技術と創造性を組み合わせると、サービス業含めあらゆる業種のデジタル化ができるはずです。

素敵ですね。私も田舎出身で、都心に住むことに疑問を感じ始めているので共感します。 実現・普及に向け、改めて現在のステージについてお聞かせいただけないでしょうか。

飯田さん

セレンディクスでは昨年3月2日、日本初の3Dプリンター住宅を小牧市の百年住宅さんの敷地に創りました。
24時間で家ができると発表していましたが、実際には23時間12分で完成し、国内向けプレス配信しか行わなかったにも関わらず世界26か国、59媒体で我々のニュースが流れました。

10月には、6棟をテスト販売しましたが、即完売し、高島屋さんの福袋商品として販売された限定1棟には、46棟の申し込みがありました。
日経トレンディさんの2022年のヒット商品にも、スタートアップとしては唯一、20位に選ばれていいます。

また同一のデジタルデータを使い、世界初の同時5か国での出力に取り組んだことも大きな進歩でした。
これは一つのデジタルデータを日本、ヨーロッパ、中国、韓国、カナダのチームに送り、全く同じ住宅が、世界5か国で同時につくることが可能になる住宅の水平分業モデルといえます。

国外含めて進めていらっしゃるのですね。今後はどのような予定なのでしょうか。

飯田さん

10平米の家を発表して以降、60代以上の方からの多くのお問い合わせをいただいています。
「30年のローン支払いが終わったら、リフォームに1000万円かかるといわれた」
「一生賃貸でと思っていたら、60歳から家を貸してくれなくなった」
という実情があるようです。

すでに3000件近くのお問い合わせをいただいており、慶応大学さんと進めている夫婦2人が住める49平米の家、鉄筋RC造の3Dプリンター住宅の開発を急いでいます。
鉄筋RC造ではなくても構造的には問題ないのですが、日本の建築基準法に適合させるため、鉄筋RC造にしています。
確認申請も1週間で通りました。

今年の春先、おそらく5月に1号棟を建て、その後6棟をテスト販売していきたいと考えています。

セレンディクスはスタートアップですが、日本最大の100平米のプリントができるものを含め、協力会社を合わせると計4台の3Dプリンターを所有しています。
今春、もう一台導入するため年内に5台、来年は12台までプリンターを増やす計画です。

提供:慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター
2人暮らし用の家も販売も開始されるのですね。一般の方は購入可能でしょうか。

飯田さん

まだプロトタイプなので、今すぐに一般の方に購入していただくのは難しい段階です。

例えばトヨタさんが初めて自動車を作り始めたとき、最初の6台は好意的な購入希望者向けに販売しました。その6台にはトラブルが多発し、そのたびにエンジニアが現場対応に追われたという逸話があります。初期にどういう問題が起こるか、好意的なユーザーの協力を得て調査してから次のステップに移ったのです。

我々も今はまさしくその状態で、最初の6棟は、開発段階に付随するリスクもあることをご承知いただけるお客様に買っていただきました。

まだ不安要素があるとお考えでしょうか。

飯田さん

いえ、安全性については全く心配していません。
スフィアは壁30cmのコンクリート住宅ですので、木造住宅と比較すれば間違いなく強いです。。

実際に住んだ際の快適性について検証しています。これはデータを取ってみないと分かりません。
たとえば、断熱性能を検証するのにどの地域で行うのが正しいか。正解はなく、考えうる最適な家を一つ創り、データをとって次のステップに行かなければなりません。

プロトタイプで改善を進めながら、同時に量産できるようにも進めていく。今はそのような状況で、一般のお客様が住宅として買っていただくには、まだ1~2年かかるでしょう。

ただし専門技能を持つ大企業含む189社の協力があり、3Dプリンターも増えるので、速いペースで進められると思います。

データを取り、検証しながらより良い住まいを目指されるのですね。 あらためて、貴社の目指す将来像をお聞かせください。

飯田さん

今、世界中で住宅価格の高騰が大きな社会問題になっています。
我々のニュースが流れた後、「世界中の住宅危機を終わらせることはできるのか」と世間に問いかける報道が流れました。昨年セレンディクスは世界26か国、200媒体近くに紹介され、27の局のテレビでも紹介されました。このことは場所を問わず、多くの人の関心事が住宅問題であることを表していると思います。

ファーストミッションは住宅ローンをゼロにすることです。今の生活から住宅ローンがゼロになれば、何ができるのか、何をしたいのか。本当にやりたかった仕事、本当にやりたかった夢、新しいことに挑戦する自由、家族と一緒に過ごす自由を大切にできます。

2019年に小間と私で未来の住宅を作るという目的でこのプロジェクトをスタートし、2022年3月、日本初の3Dプリンター住宅を建て注目を浴び、先日は、経済産業省のJ-startupに選ばれました。これからもさらに加速し、最終的には、世界最先端の家を集約した、未来の街をつくりたいです。
近い将来ではまず、2025年の大阪万博で世界にアピールしたいですね。

未来の家、未来の街。それを最新の技術で現実にしていくのですね。 最後に、これから住宅購入をご検討される方、住宅についてお悩みの方に、メッセージをいただけないでしょうか。

飯田さん

先日セレンディクスは大阪・関西万博を目指すスタートアップ支援プログラムに選出されSF作家さんや協力会社さんと共に2050年どんな住宅の世界になっていくかを協議するSFプロトタイピングを行いました。その際、ほとんどの方は10年以内に、30年も住宅ローンを組む世界が終わるだろうという予測を立てています。

住宅ローンに苦しんでいる。あるいは住宅がないから不安、という方も多いと思いますが、もう少しで解決します。ですから、住宅についてはそんなに心配しなくてもよいのではないでしょうか。それほど技術はすごいスピードで進化しています。

2050年の社会では、自分の家に住むことによって幸せを感じるとても明るい未来が待っているということを伝えたいです。

ありがとうございました。具体的な課題までお話いただき、より鮮明なイメージもできました。住宅ローンのない世界、幸せを感じる未来の家を心から期待しています!

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