軽井沢を中心に、那須、熱海、伊豆、八ヶ岳等々、名立たる別荘地に、自然と調和した素敵な別荘を数多く手掛けてきた建築家、鈴木 宏幸さん。豊富な実績、培ってきた経験をもとに、別荘建築のおいて大切なことは何かについてお話を伺いました。
これまで、どのような別荘を実現されてきたのでしょうか。
どのような?というのは難しいですね。
森の中に佇む、海を臨む、傾斜地もありますし、コンパクトな小屋のような別荘、浴室が2つ、浴槽は3つもあるもの、車が何台も駐車できるように等々、場所やお施主さんのご希望に合わせ、様々な別荘を形にしてきました。
お施主さんの目的は「家族が集まる」「家族で楽しむ」といった方が多いです。
「車好きの仲間で集まる」というご希望もあります。
「人が集まる場所」それが別荘ですね。
おひとり、あるいはご夫婦で静かに過ごすこともあると思いますが、別荘の主な目的としては、人が集まる場所づくり。お住まいのお宅との大きな違いです。
人が集まる場所としての別荘を数多く建ててこられたのですね。
どの別荘もとても素敵で、私たちのユーザーさんからの人気も高いのですが、別荘建築に大切なこと、大切にしていることをお聞かせください。
建て主の方が何を目的に建築するか。
それが一番大切ですが、建築家としては敷地の特性を活かすことを何よりも求められると考えています。
最大限に敷地のポテンシャルを活かす。それを心掛けています。
敷地を活かすことについて、印象的なケースがありますか。
例えば、046のお宅は、敷地は南北に長く、北側道路から南側へと下る傾斜地です。
傾斜を考えれば、道路に近い北側に寄せてコンパクトな南向きプランとするのがオーソドックスでしょう。
ですが、あえてLDKを傾斜に沿って南側へ下りていくL型のプランとしています。
東西の両隣ともに北側に家、南側を庭という配置計画で、南側の庭は軽井沢の森にふさわしいものになっていたからです。隣地の庭を借景として活かすことをご提案しました。
オーソドックスに考えると、南側を庭として、南側の敷地のお宅(北側に寄せて建築されています)をいかに隠すかという植栽計画となり、その先の庭を感じることも無かったと思います。
建て主さんのご希望を大切にすることはもちろんのこと、敷地の特性を活かすことこそ建築家ならではですね。敷地は別荘について重要な要素かと思いますが、土地探し・土地選びについて大切なことはありますか。
まずはエリアです。何度も訪れている、あるいは訪れたい場所、好きな場所に。
そしての土地を知ることが大切です。
これまでもご縁があって、何度も足を運んでいる土地であればよいですが、あまり馴染みのない場所では、特に実際に足を運んでみる大切です。せっかく建てる別荘。何度も行きたくなる場所に建てたいものです。焦らずじっくり選んでください。
土地選びという部分で具体的に何かありますか。
例えば、軽井沢のような避暑地では、夏だけでなく冬の様子を知っていただくことも大切です。
冬もご利用になるのでしたら、なおのことです。
夏はうっそうとした森も、冬は葉が落ちてスカスカ。
「お隣が近すぎた」なんてこともあります。
晴れた気持ちのよい日だけでなく、雨の日に訪れると、また違ってくるかもしれません。
春夏秋冬、一年を通して見ることができれば、もっと良いです。暑くても寒くても、樹々の葉があっても無くても、気に入った土地なら間違いないでしょう。
確かに、良い季節、良い天候だけではないですものね。季節、天気。その土地の様々な表情を見て、知って選ぶことが大切と。
それでは建物についてはいかがでしょうか。
間取りや動線など、いろいろあると思います。
間取りや動線は、住宅以上にシンプルさが重要かなと思います。
都会では味わうことのできない場所にするのは当然として、敷地の特性を活かして、オリエンテーションだけにとらわれず、そこにいるだけで心地よい、そんな場所をつくるのが何より大切です。
LDKやテラス、浴室といった空間をどこにレイアウトするかは特に気を遣います。
大きな開口のLDK。
引込戸による半露天風呂になる浴室。
屋根のあるインナーテラスは雨の日でも楽しめますし、夏の暑い日には日陰もつくってくれます。これらの要素はすべて景色を楽しむ仕掛けです。
動線はパブリックスペースとプライベートを意識して、プランしています。自分たちが主に利用する空間と客室などのゲストが利用する空間の分け方です。
構造や性能面についてはいかがですか。
構造については、LDKは大胆に大きな開口を集中、寝室などは小さな窓程度で耐力壁となる壁をとることで、構造的な耐力を担保することが多いです。
寒冷地の場合は冬季利用をどの程度考えるかによって、性能仕様が変わります。
断熱や気密などの建物性能や設備がよくなっていますので、冬季利用を前提とする方が多くなっていますね。
大きなガラス面を設計しますが、開閉する箇所を限定して、FIX部分とのバランスをとることも気密性を考えてのことになります。
気密と断熱をセットで考えることで、ランニングコストにも差が出てきます。
デザインはやっぱり「カッコよく」というご要望が多いでしょうか。
もちろん!
せっかく建築家に依頼して建てるのですから、当然です(笑)
私自身は、外観は「風景に馴染む」「景色に溶け込む」ことを大切にしています。
建て主のかたの別荘ではありますが、外観は他のかたが目に触れるものでもあります。
決して邪魔にならず、美しい家をつくりたいと思っています。
インテリアは建て主のかたのお好みが一番です。
落ち着いた雰囲気なのか、ナチュラルな感じなのか。タイル、木、石・・気にせず、好きなものを選んでいただければよいと思います。好きなものを選んでいくと、よい感じに案外まとまるものです。
できるだけ自然系の素材だといいですね。
普段の住まいとは異なる、別荘だからこその考えるべき点がたくさんありますね。
最後に、ハウスメーカーさんや工務店さんではなく、建築家との別荘建築に向いているのはどのような方でしょうか。
「こういうものをつくりたい」という方はぜひ建築家に。
自分の好みがはっきりしている方、自分の想像を超えたものを愉しめる方にも向いていると思います。
想像を超えたものと言っても、特に大それた発想である必要はありません。
「こんなこと考えてなかったけど、よさそう」と、ちょっとしたことで十分です。
小さなことでも、想像を超えた部分では、建築家に委ねてみることも必要になってきます。
自分の好みに+αするような感じでしょうか。
もちろん信頼できる建築家であることが大前提ですし、そういう信頼関係を築いていくことも大切です。
ありがとうございます。これから別荘建築を考えている方へのメッセージをお願いします。
別荘は多くの方にとって憧れです。
普段お住まいのご自宅のように、収納や動線といった機能性に必要以上にとらわれることなく、気持ちよく過ごせる空間、楽しめる空間づくりができます。
ぜひ楽しんでください!
別荘を訪れるその前の建築のプロセスを一緒に楽しみましょう!!
ありがとうございました。
別荘づくりそのものを楽しめると、その別荘で過ごす時間も、より良い、より心地よいものになりそうですね。
様々な別荘地に、様々な別荘を建てていらっしゃいますので、また個別の建物についてもお話を伺えればと思います!